『ファントム・オブ・パラダイス』
Phantom of the Paradise監督 ブライアン・デ・パルマ
1974年
アメリカ
92分
またしても
デ・パルマの問題作
『ファントム・オブ・パラダイス』『オペラ座の怪人』の物語をベースに描く
ロックンロール・ミュージカルです。
これがまた普通の感覚では観れない
とんでもない濃厚な作品となっております。
ロック業界の舞台裏を毒っけタップリに描くミュージカル
あらすじ見た目・歌声は冴えないが
天才的なセンスをもつ無名のミュージシャン
ウインスローは自分の曲を懸命に売り込もうとしていた。
ところが『デス・レコード』の社長であるスワンに騙され
今まで書き溜めていた曲を全て奪われる。
ウィンスローは曲を取り戻そうとスワンに近づくが
無実の罪で投獄されてしまう。
ウィンスローは獄中で自分の曲がスワン名義で売り出される事を知り
脱獄してレコード会社に乱入するのだが
プレス機に頭を挟まれ、顔と声が潰れてしまう。
ウィンスローは仮面をかぶった怪人ファントムとなり
復讐を企てるのだが
スワンは逆に正式契約を結ばないかと話をもちかける。
それは恐ろしい『悪魔の契約』だった。凄い映画を観たなーって思える作品です。
デ・パルマの毒とロックの毒が
見事に融合した
奇跡的な映画。しかも
笑えるっていうんだから
敵なしの風格すら感じさせます。
映画に出てくるプロデューサーの
スワンは
日本の音楽業界でいうところの
小室哲哉、秋元康、つんくみたいな存在です。
華やかな音楽シーンに隠れたドス黒い部分を
容赦せずにこれでもかと描いてくれています(笑)
この映画の素晴らしさは
92分で終わる事!これでもかと詰め込まれた壮大な物語を
ものの見事に完結させます!
他の監督が同じ内容で作成したら
絶対にこうはいかないでしょう(笑)
時間を短縮する為なのかはわかりませんが
とりあえず主人公の移動は
猛ダッシュ!
それを手持ちカメラが追い掛け回すのですが
信じられないスピード感!なぜそんなに急ぐのか(笑)
それだけでなく物語も
2段飛びで進んでいくので
ついていくのがやっとです。
話の内容的には非常に重たく悲惨なのですが
とにかく急ぐというテクニック(?)を駆使する事で
まったく深みのないジェットコースターのような仕上がり。
なんでだろう?悲惨なシーンほど笑えます。
悲劇のヒーロー『ファントム』と、悪魔のしもべ『スワン』の怪演
本作の主人公
ウィンスロー(ファントム)を演じるのは
ウィリアム・フィンレイ!これこそ彼の代表作!
デ・パルマの前作
『悪魔のシスター』では
ド変態ドクターを演じていましたが
本作で見事主役に抜擢!
まさに怪人といった凄まじい演技を魅せてくれます!
ちなみにこのブログでも紹介した
トビー・フーバー監督の
『悪魔の沼』にも出演しています。
一度見たら忘れられない濃厚な演技に爆笑でした。
刑務所で自分が騙された事に気がつき

怒りの脱獄!
仮面の怪人ファントムとなり復讐を誓う!

スワンめ!絶対に許さん!
しかしまさかの『契約しないか?』の提案。

そんなもん絶対に断ると思いきや
思いっきり契約!
何でだよ!宿敵
スワンを演じるのは
ポール・ウィリアムズ。彼はアメリカの作曲家です。
スリー・ドッグ・ナイト『オールド・ファションド・ラブ・ソング』
『アウト・イン・ザ・カントリー』
『ファミリー・オブ・マン』カーペンターズ
『愛のプレリュード』『雨の日と月曜日は』などを作曲している大御所。
本作でのスワン役は激インパクト!
最高に気色悪いです(笑)本作の音楽も彼が担当しているので
もうノリノリで演じています。
ちなみに
『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の
マモーは
本作のスワンがモデルになっています。
マモーの声ってたしか
西村晃だったなー。
あれも気持ち悪かったなー。
この二人の壮絶な戦いは、悲惨な結末をむかえますが
どこかコミカルな印象なのが不思議。
そういう意味でも面白い映画だなーって思います。
エンドロールも見逃しちゃダメですよ!
まさにロックンロールミュージカル!妙に耳に残る名曲ぞろい!
この映画最大の魅力は、なんと言っても
音楽でしょう。
デ・パルマのロックセンスが普通とずれている為
どこがサビなのか不明な爽快感のない音楽ばかり(笑)
これがまた、微妙にクセになるというか
何度も聴いているうちに感覚が麻痺してきます。
この映画の中毒性はここにあるのかもしれません。
個人的に一番好きだったのが
プロデューサー・スワンの言いなりで
全くポリシーのない
『ジューシーフルーツ』というバンド。

最初は50'sのパロディバンドだったのに
ビーチボーイズみたいなサーフロックをやれと言われれば
ビーチ・バムスというバンドになり
キッス風のメイクで奇抜なステージを売りにするバンドでは
アンデッドという名前に(笑)
カメレオンのように変貌を遂げる姿は
痛々しくもあり、ひたすらに笑えます。
そしてどの曲も微妙に耳に残る曲ばかりってのが最高!
そしてスワンが一目ぼれしたオカマのアーティスト
その名は
ビーフ!(すげー名前!)

見た目はアレですが
歌声はなかなかドスが効いていてカッコイイ!
ちなみにビーフのシャワーシーンは
『サイコ』のパロディ。
『殺しのドレス』でも同じ事やってますから
どれだけヒッチコックが好きなんだよ!って感じです。
彼らのライブシーンはド迫力で
いかにもデ・パルマらしいカメラワークで
アートなパフォーマンスを魅せてくれます。
イタリアンホラーの傑作
『サスペリア』のヒロインを演じた
ジェシカ・ハーパーは、シンガーとしての成功を夢みる女性
フェニックスを演じています。

最初は純粋に歌で勝負しようと思っていたはずなのに
いつの間にかプロデューサーに媚を売るようになり…という
まあよくある話です。
彼女のやわらかい歌声は魅力的。
余談ですが、近田春夫が関わったバンド
『ビーフ』や
『ジェニーはご機嫌ななめ』でデビューした
『ジューシィ・フルーツ』はこの映画が
元ネタなんですね。
未だに人気が衰えないカルト・ミュージカル映画。
まだ観ていないという方は是非!
泣いて笑って!
ボクにとってはこの作品がデ・パルマの最高傑作です!
オールタイムベストを作っても、
確実にベストテンには入るでしょうね。
おっしゃるとおり92分という短い時間の中で、
愛と悲劇と笑いとロックを猛烈なスピードでかき鳴らしており、
阿鼻叫喚のラストシーンには何度観ても滂沱の嵐ですボクは!
エンドロールは歌も含めて最高ですよね!
スパイクロッドさんコメントありがとーございます!
> ボクにとってはこの作品がデ・パルマの最高傑作です!
> オールタイムベストを作っても、
> 確実にベストテンには入るでしょうね。
恥ずかながら今回初めて観たのですが
あまりの超絶展開に爆笑しっぱなしで
こんなに笑える悲劇があっていいのかと感動しました(笑)
これは何度も観たくなる中毒性がある大傑作ですね!
> おっしゃるとおり92分という短い時間の中で、
> 愛と悲劇と笑いとロックを猛烈なスピードでかき鳴らしており、
> 阿鼻叫喚のラストシーンには何度観ても滂沱の嵐ですボクは!
> エンドロールは歌も含めて最高ですよね!
そうそうそう!エンドロールが素晴らしいんですよねー!
暴力的な映画なのにも関わらず
あのピアノに没頭するファントムがなんか泣けてきます。
スパイクロッドさんの感想はいつも的確で気持ちいいです!
これからもよろしくお願いします!友達少ないのでー!(泣笑)
初めましてU・Mと申します。
この映画は25~6年前、たった一度だけ
テレビの深夜映画劇場で観て、妙に
記憶に残った思い出があります。
因みにうちの姉はこの映画とロッキー・
ホラーショー二本立てを見て、ロッキー・・・
の方が面白かったと言っていましたが、
自分はこっちの方が面白かったですね。
U・Mさんコメントありがとうございます!
> この映画は25~6年前、たった一度だけ
> テレビの深夜映画劇場で観て、妙に
> 記憶に残った思い出があります。
妙に記憶に残る(笑)
たしかにインパクトのある内容ですよねー!
> 因みにうちの姉はこの映画とロッキー・
> ホラーショー二本立てを見て、ロッキー・・・
> の方が面白かったと言っていましたが、
> 自分はこっちの方が面白かったですね。
ロッキー・ホラーショーも名作ですよね!
いつかレビュー書こうかなって思ってます。
二作を比較するのも面白いかも?
コメントありがとうございました!励みになります!
今もって、わが心の最高映画、の一つです。
前半の、ダサダサなウィンスローも可愛いし、ふと知り合ってしまった
フェニックスとの淡い恋も、それが破れ奪われていく過程も、
恋愛ドラマとして強く残る出来です。そして、二段三弾の
怒りの復讐劇が遂に…というあのクライマックスは、
もう忘れることなどできないでしょう。そしてそこに仕込まれた伏線で、
悲しい最期を遂げるファントム…最後の一言「ウィンスロー…」に、
涙しない人などいるでしょうか。若干のコミカルを含み、途中までは
「笑える映画」と思わせながらのあの、涙のクライマックス。
デ・パルマ監督の、若き日の最高作品だと言い切ります!
今もって、わが心の最高映画、の一つです。
前半の、ダサダサなウィンスローも可愛いし、ふと知り合ってしまった
フェニックスとの淡い恋も、それが破れ奪われていく過程も、
恋愛ドラマとして強く残る出来です。そして、二段三弾の
怒りの復讐劇が遂に…というあのクライマックスは、
もう忘れることなどできないでしょう。そしてそこに仕込まれた伏線で、
悲しい最期を遂げるファントム…最後の一言「ウィンスロー…」に、
涙しない人などいるでしょうか。若干のコミカルを含み、途中までは
「笑える映画」と思わせながらのあの、涙のクライマックス。
デ・パルマ監督の、若き日の最高作品だと言い切ります!
コメントの投稿
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://moviestar1.blog.fc2.com/tb.php/92-0f6414e3
『ファントム・オブ・パラダイス』
1974年/アメリカ/92分
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ウィリアム・フィンレイ
ポール・ウィリアムズ
ジェシカ・ハーパー
ひとりの作曲家の愛と悲劇と復讐を描いた、『オペラ座の怪人』をもとにさまざまな要素を詰め込んで大胆なまでのアレンジを加えた、ブライアン・デ・パルマ初期の傑作ロックミュージカル。
一見するとチープでコミカルな単なるB級映画のよ...
[2013/12/04 17:22]
URL
偏愛映画自由帳