『少年は残酷な弓を射る』 世界中の評論家から高い評価を得た傑作!圧倒的に残酷な物語

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『少年は残酷な弓を射る』
We Need to Talk About Kevin


監督  リン・ラムジー


2011年
イギリス
112分



ちょっと早いんですが、今年を振り返ってみて
一番繰り返して観た映画を紹介します。
『少年は残酷な弓を射る』です。
5~6回は観たような気がします。
しかも毎回レンタル(笑)買えよ!って話ですね。

イギリスの女性作家に贈られる
文学賞であるオレンジ賞を受賞した
ライオネル・シュライヴァーの小説を映画化。
これが本当に良くできた映画。
母の視点から息子を描くドラマなのですが
恐怖映画とは違う、怖さがあり
最後におとずれるショッキングな展開に圧倒され
同時に『親子』って何なのかを考えさせられます。


母の愛を拒絶する息子。彼はモンスターとなり母を追い詰める


あらすじ

世界を旅行する作家のエヴァは
自由を愛し、仕事にも誇りを持った女性。
旅先で知り合ったフランクリンと一夜をともにし
エヴァは妊娠してしまう。
今までの自由とキャリアをあきらめなければならないエヴァは
妊娠を心から喜んではいなかった。

生まれてきた息子ケヴィンは決して母に心を開かず
母に対して嫌がらせを繰り返し
時には精神的に追い詰めるような怪物に成長する。
やがて、美少年へと成長したケヴィンだったが
エヴァの全てを破壊してしまう恐ろしい事件を引き起こす。



凄い映画。
最後まで続く緊張感!
エヴァを演じるティルダ・スウィントン
これまでのキャリアで最高の演技!
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彼女は製作総指揮も担っています。

ケヴィンを演じるエズラ・ミラーの鬼気迫る怪演!
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圧倒的な存在感!怖い!

ここ最近観た映画の中でダントツの作品。
でもこの映画を『つまらない』という人が多くて(笑)
もう少しだけ深く掘り下げるだけで
本作に対する気持ちが変わると思うんです。

あらすじを読んでもらえばわかるように
息子が母を苦しめるだけの話と感じる人も多く
重苦しく救いのない物語に耐えられない人もいるでしょう。
しかしこの映画、それだけではないような気がします。



最後までエヴァの目線で語られる物語


エヴァは妊娠を喜んではいませんでした。
しかし父親のフランクリンは大喜び。
この時点で二人の間には見えないがあります。
大きくなるお腹にも愛情を持てず
生まれた時ですら心から喜べていません。
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エヴァが抱くとケヴィンは泣き止まず
フランクリンが抱くと泣き止む。
エヴァが機嫌をとろうとしても無視。
パパにはニコニコと抱きつきます。
これが非常に残酷な描写で繰り返されます。

このパパも問題ありで
ケヴィンを溺愛しているので
エヴァがどんなに悩んでいても
『男の子ってそういうものだから』
全く取り合ってくれません。
ケヴィンに疑いを向けるエヴァに
カウンセリング受けろとまで。
二人は離婚直前の状態になります。

ケヴィンは毎日のように嫌がらせを繰り返し
ノイローゼのエヴァを見て喜んでいるようにも見えます。
その嫌がらせは背筋が凍るほど憎悪に満ちています。

 これは歪んだ愛のカタチなのか?
 それとも感情のない悪魔のような存在なのか?


精神的に追い詰められていた矢先に
が生まれます。
これが天使のように可愛らしい子で
エヴァは母の喜びを初めて感じたと言ってもいいでしょう。
妹の存在はケヴィンにとっては驚異だったのかもしれません。
ケヴィンの行動はどんどんエスカレートしていきます。
そもそもエヴァが何をしたというのか?
息子に拒まれる原因なんて一つもありません。
唯一考えられるのが『望んでいた子ではなかった』という事実。
それでも必死に母親になろうとするエヴァですが
ケヴィンは絶対に心を開きません。
そしてどんどんエヴァは孤立していくのです。

 それは母を独占したいという欲望だったのか?
 それとも心から母を憎んでいたのか?


どちらであれケヴィンがモンスターであるという
事実は変わりませんが
エヴァの目線では語られる物語では
ケヴィンの気持ちや行動の意味がハッキリしません。
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この映画のテーマは『母親という生き方』


本作で一番感動的なのは
母である事を諦めないエヴァ。

どんなに追い詰められても
どんなに孤独になっても
どんなに恨まれても
彼女は母である事を諦めません。
この辺にこの映画の真のテーマがあるような気がします。

悪魔のような息子であろうが
食事を用意し、洗濯物を綺麗にたたみ
部屋を掃除している姿は
胸が締めつけられます。



愛を拒絶される母と悪魔のような息子
この二人には似ている部分もあります。

例えばこれ。

噛んだ爪を並べるケヴィンと、卵の殻を皿の隅に並べるエヴァ。
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無意識の行動に共通点があるのが面白い。

また子供が間違って開けないように鍵をしている戸棚と
ケヴィンが通販で買った自転車の鍵。
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不思議と似たものを欲しがっているのかもしれません。

また二人が車に乗った時の後ろ姿。
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どことなく似ている二人。
この二人が親子である事を印象づける上手い演出ですね。


徹底して映し出される『赤』


本作は『赤』を印象的に使っています。
トマト祭りから始まり
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自宅にぶちまけられたペンキ
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パンにベッタリ塗られたジャム
他にもあちこちに鮮やかな赤が見られ
それはまるでのようであり
ラストシーンでの惨劇を予告するかのよう。

そして本作で幾度となく映し出されるのが
エヴァがペンキだらけの家を掃除するシーン。
体中真っ赤になりながらも
必死にペンキを落としていきます。
そして真っ赤に染まった手を洗うシーンは
息子が犯す罪への贖罪にも見えます。

この『赤』を使った演出は本当に見事で
映画の緊張感を高める事に成功しています。


ラストシーンで二人が交わす言葉。
非常に曖昧なセリフなんですが
とても印象的なシーンです。
『母である事』
『母親という生き方』
の意味を
深く考えさせられる映画でした。
もし観る機会がありましたら、是非2回観てください。
絶対に2度目の方が面白い!






[ 2013/11/20 14:59 ] クライム | TB(1) | CM(2)

評価の難しい作品

ボクも確かにいい映画だとは思うんですけど、
手放しで賞賛することはできない、
なんかモヤモヤしたものが残ってしまいました。

エヴァが母であろうとすることは本能なのか?
義務なのか?それとも贖罪なのか?
ボクにはどうにも答えが見つかりません。
ただひとつ言えることは、
明らかに彼女は“無理”をしているということです。
別の言い方をすれば、
“努力”しているともいえるかもしれません。
女性には先天的に母性なるものが備わっているのか、
それとも後天的に備わってくるものなのか、
男であり子供もいない自分には、
うかつに即答できない難しい問題ではあるんですけど、
それがどうにもわからない。

なんか自分でも何を書いているのかよくわからない、
支離滅裂な文章になってしまい申し訳ないっす(笑)
ニルコビチさんの感想を読んでいたら、
忘れていた難問がふたたび浮上してきたようです(笑)
もっかい観てみるかな!

あ、それとTB打たせてもらいます♪
[ 2013/11/21 23:18 ] [ 編集 ]

Re: 評価の難しい作品

スパイクロッドさんコメントありがとうございます!

> ボクも確かにいい映画だとは思うんですけど、
> 手放しで賞賛することはできない、
> なんかモヤモヤしたものが残ってしまいました。

そうなんですよ!賞賛できないモヤモヤ感は凄いですよね!
ただ、強い爪痕を残す作品だと感じました。

> エヴァが母であろうとすることは本能なのか?
> 義務なのか?それとも贖罪なのか?
> ボクにはどうにも答えが見つかりません。

そうですね。この映画はエヴァ目線なのに
『本心』がどこにも書かれていませんし
本当は逃げ出したいと思ってたに違いないのですが
そでれも母である事にこだわっている感じ。
それがこの映画の描きたかった部分なんだと思います。
子を持つ母の悲しい本能かもしれません。

> ただひとつ言えることは、
> 明らかに彼女は“無理”をしているということです。
> 別の言い方をすれば、
> “努力”しているともいえるかもしれません。
> 女性には先天的に母性なるものが備わっているのか、
> それとも後天的に備わってくるものなのか、
> 男であり子供もいない自分には、
> うかつに即答できない難しい問題ではあるんですけど、
> それがどうにもわからない。

女性でも難しい問題だと思いますよ。
母になるために無理をして努力をして
息子に認められたくて必死に生きてきたエヴァは
仕事も自由もなくして、いつの間にかこうなったんでしょう。
『私はあなたになんか負けない』という気持ちも感じますし。

> なんか自分でも何を書いているのかよくわからない、
> 支離滅裂な文章になってしまい申し訳ないっす(笑)

とーんでもない!スパイクロッドさんの視点大好きです!
これからも勉強させてもらいます!

> あ、それとTB打たせてもらいます♪

ありがとうございます!
トラックバックってあまり使い方わからないんですが(笑)
なんか説明読んでも頭に入ってこない(笑)
これもまた勉強し直さなきゃですねー。ではでは!
[ 2013/11/22 07:37 ] [ 編集 ]

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『少年は残酷な弓を射る』

2011年/イギリス・アメリカ/112分 監督:リン・ラムジー 出演:ティルダ・スウィントン    エズラ・ミラー
[2013/11/21 23:19] URL 偏愛映画自由帳