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『バーバー』 髪型を変えるように少しだけ人生を変えたい

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『バーバー』
The Man Who Wasn't There

監督
ジョエル・コーエン

脚本
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン

2001年
アメリカ
116分


コーエン兄弟の傑作『バーバー』
1940年~50年代後期にかけてアメリカで製作された
フィルム・ノワールの影響を感じさせる白黒映画です。
原題『The Man Who Wasn't There』を直訳すると
『そこにいなかった男』

白黒映画といっても光と影のコントラストが強いわけではなく
淡いグラデーションが美しく、とても柔らかい映像です。
これはカラー用のフィルムで撮影したものを
あえてモノクロに変換した為に生まれた効果です。

本来カラーで表現できるものを犠牲にしているわけで
退屈な映像になってしまうという可能性があったと思うのですが
そのリスクを補うように構図が冴えまくりの
まるで絵画のような映画です。

劇場公開されたのはモノクロのヴァージョン。
現在はカラー版も存在します。
どちらも観たのですが、カラーも素晴らしく美しいので
できれば両方観て欲しい!

髪型を変えるように 少しだけ人生を変えたい


あらすじ

エドは、義理の兄が経営する床屋で働いていた。
妻ドリスは彼女の上司であるデイヴと不倫関係にあるようだった。
エドは床屋を訪れた胡散臭い男(オカマ)から
新時代のビジネスといった投資話を聞く。
初めはペテン師の戯言と思っていたが
『他の人生が待っているかも?』という気持ちが芽生え始める。
投資の資金は1万ドルを工面する為に
妻の不倫相手のデイヴを恐喝する事を思いつくが
その行動がきっかけで人生の歯車が狂っていく。


主人公エド・クレイン
ビリー・ボブ・ソーントンが演じています。
曲者な雰囲気とハードな存在感で
数々の話題作に出演しているベテラン。
本作の演技は最高で
何も喋らなくても映画が成り立ってしまう存在感は凄い!
まだ未見なのですが
インデペンデント映画『スリング・ブレイド』では
監督・脚本・主演を務め、アカデミー脚色賞を受賞してます。
この作品はレビューでの評価が高いので
観てみようと思っています。

エドの妻ドリスフランシス・マクドーマンド。
コーエン兄弟の作品ではお馴染みの女優さんです。
主演した『ファーゴ』が世界的に成功したことで
彼女はジョエル・コーエンの奥さんなんですね!
ミラ・ジョヴォヴィッチやヘレナ・ボナム=カーターみたいに
監督と結ばれる女優さんって多いんですね。
後半にかけての『表情だけで伝える』上手さ!
大女優だなぁと感心してしまいます。

レイチェル・“バーディ”・アバンダスを演じるのは
スカーレット・ヨハンソンです。
セクシーな女優と認知されている彼女ですが
『バーバー』は、素朴な少女だったヨハンソンが
大人を感じさせる女優として成長した姿が見れる貴重な作品。
特に後半にかけて難しい役を大胆に演じています。
当時15歳(!)なんですけど驚きの色っぽさです。

変化球で人間の愚かさを描くコーエン兄弟の上手さ


この映画を『面白くない』という人が少なからずいるようですが
たしかに面白みには欠ける作品ではあります(笑)
個人的には大好きな映画で
皮肉っぽい展開の中にユーモアを感じさせる
味わい深い映画だと思います。

この映画の主人公は
どこにでもいるような
くたびれたオッサン。凡人。

彼の熱のない眼差しは
人生に諦めのようなものを感じさせます。
sashie078.jpg
主人公であるエドの心の声がストーリーの語り部です。
感情は無く、ボソボソと語り続けます。
しかしエド本人はほとんどセリフがありません。
気難しそうに煙草を吸って(吸いすぎ!)
感情もなく仕事をこなし
自分以外の人間を軽蔑し
かといって争うのも柄じゃないので
日々、無関心を演じて生きています。

妻の不倫に気付いても無関心なエド。
完全に冷えた関係でしたが
胡散臭い儲け話をもってきた
ペテン師との出会いをきっかけに
妻の不倫相手のデイヴを恐喝する事を思いつくのですが
それは妻への復讐というよりは
ちょっとした『いたずら心』に近い行動でした。
ところが、それをきっかけに
彼の退屈な人生に大きな波が押し寄せ
それを避ける術を知らないエドは波に呑まれて行きます。
自分の行動に責任を感じているようにも見えますが
転落していく事に関心が無いようにも見えます。

それからバーディ(スカーレット・ヨハンソン)と出会い。
彼女が弾くベートーベンのピアノ・ソナタ『悲愴』
エドは心を奪われます。
今まで居場所の無かった人生に
小さな灯火を見つけたような感情が芽生えます。
やがて彼女の存在は、エドの心の拠り所になります。
sashie077.jpg
しかし『彼女に幸せになってもらいたい』という気持ちが
皮肉にも悲劇に拍車をかけてしまいます。
清楚でおしとやかに見えたバーディですが・・・
これがなかなかの曲者!
人は見かけによらないって事なのでしょうが
そこまでやるか!コーエン兄弟!

基本的に重たい映画ではありますが
時々入ってくるユーモアが笑いを誘います。
『未確認飛行物体』のエピソードって必要?って思いつつも
まんまとコーエン兄弟の罠にハマり笑ってしまいました。

金持ちばかりが得をする時代と根深い人種差別


客の髪を切って、髪の毛をゴミ箱に捨てる毎日。
エドはアメリカンドリームとは縁のない人物。
憧れているわけでもなく
むしろ嫌悪感を持っているように見えます。
たまに『他の人生があったのかも』と考えたりする程度。

それに比べて他の登場人物は
自信過剰な金持ち(決まってデブ)だったり
見栄っ張りで口ばっかりな人物が目立ちます。

例えばディナーの最中に
『日本兵は虫やら草の根っこやらを食っていた』
『ガリガリでニキビ面のアメリカ兵が日本兵に食われてた』

なんて品のない小話で大笑いするシーンがあったり
ドリスの従兄弟の結婚式に向かう途中
『イタリア人は大嫌い』と顔をしかめたり
人種差別丸出しのセリフがあります。

また裁判のシーンでは大げさな弁護士が登場し
陪審員のお涙を頂戴する大芝居をします。
とてもじゃないけど裁判とは言えない感じです。
簡単にねじ曲がる不条理な正義は
いかにも当時のアメリカ人といった感じ。
これらのシーンは
『どこにも属せない男』であるエドの孤独を強調して
魅力的に感じさせるエッセンスになっているような気がします。

エドはゲイなのでは?という説もあります。
たしかにそう感じさせるほど異性への興味を感じません。
妻の浮気にも無関心で
夫婦の関係は冷めきっているという事実や
女子高生からの色っぽい目線も拒絶したり。
でもゲイではないと思います。
エドにとってはセックスは厄介事なのでしょう。
興味がないわけじゃなく、面倒はごめんだという事。

あっさりとした幕切れと深い余韻 何度も見たくなる映画


ネタバレは避けたいので結末は書きませんが
とても急ぎ足で美しいラストシーンが訪れます。
実にあっさりとした皮肉な結末。
エドの言葉が走馬灯のように思い出され
不思議な余韻が残ります。

流れに身を任せるクラゲのような人生のエドですが
厄介事から逃れるような生き方をしていても
他人を不幸にしてしまう可能性がある
という事でしょうか。

『ちょっとしたきっかけで人生の歯車が狂っていく』
これこそコーエン兄弟の真骨頂です。








[ 2013/09/01 13:42 ] クライム | TB(0) | CM(0)

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