『セブン』 サイコ・サスペンスの大傑作!『七つの大罪』をモチーフとしたセンセーショナルな犯罪を描くデヴィッド・フィンチャー監督の代表作!ブラピかっけー!モーガンさん渋ッ!

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セブン
Seven



監督 デヴィッド・フィンチャー

1995年
アメリカ
127分



今更??って感じに紹介するのが恥ずかしい
サイコサスペンスの大名作『セブン』です。
わたくしデヴィッド・フィンチャー監督大ファンなのですが
この『セブン』で完全に打ちのめされた口です。
暗闇の魔術師とも言うべき暗くトーンを抑えた不気味な映像と
想像を絶する猟奇的な事件と異常な犯罪者!
しかしながらこの作品・・・
1995年って!
もう20年近く前なの???
時の流れに恐怖すら感じております。

4週連続で全米興行成績1位に輝いた大ヒット作品ですが
今回は『七つの大罪』とは?という視点から書いてみようかと思います。
今回はネタバレ注意です!

想像を絶する『7』の呪縛 奇跡のサイコ・サスペンス・ホラー


退職まであと7日の刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と
新人刑事ミルズ(ブラット・ピット)は、死体発見現場に急行した。
死体は醜い肥満の男。
彼は食べ物の中に顔を埋めて死んでいた。
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サマセットは死体の胃の中から発見されたプラスチックの破片と
犯人が書いたと思われる「GLUTTONY(暴食)」の文字を発見。
これから続くであろう事件の始まり感じ取っていた。
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次の被害者は強欲な弁護士。
現場には被害者の血で「GREED(強欲)」の文字が残されており
サマセットは、犯人が「七つの大罪」をモチーフにして
殺人を続けていると判断するのだが。。。




ため息が出るほど 完 璧 !
これほど刑事と異常な犯罪者の心理戦を描いた作品があったでしょうか?
。。。まあ・・・あったかもしれませんが(笑)

サマセット刑事モーガン・フリーマンが演じています。
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この映画の主役といっていいでしょう。
刑事人生を残り7日という局面で
今までの刑事人生を振り返っても感じた事のない異常性と
おそらく犯人には目的に向かって迷いなく犯罪を繰り返しているという
ベテランならではの読みで犯罪に立ち向かいます。
彼の本作で仕上がったイメージは強烈そのものであり
本作以降のモーガン・フリーマンは超売れっ子として大活躍する事になります。
制作サイド撮影前はアル・パチーノにオファーしようかと考えていたようですが
結果オーライといいますか、モーガンでよかった気持ちでいっぱいです。

ちなみに本作では『サマセット犯人説』というのもあります。
かなりマニアックな見解だと思いますので
今回のブログでは端折りたいと思います。



血気盛んなミルズを演じるのはブラッド・ピットです。
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本作ではこれ以上ないくらい彼の魅力が発揮されており
この後に撮影された『ファイトクラブ』では
さらなるエキセントリックな演技を魅せてくれます。
当時『アポロ13』のオファーを蹴って撮影に挑んだという事ですが
そのチョイスは見事に成功しましたね。
ちなみに映画後半で左腕を負傷していますが
スタントを使わずに危険なシーンを撮影し
実際に骨折していたのだとか。


ミルズの奥さんを演じるのはグウィネス・パルトロー。
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その美しさで現在では大女優として名を馳せる彼女ですが
本作での素人臭さは映画にピッタリと言っていいでしょう。
刑事のワイフとしての苦悩(鬱病といっていい程の)は
本作の結末を絶望的なものに仕上げる重要なファクターです。


ネタバレで申し訳ありませんが犯人のジョン・ドウケヴィン・スペイシー。
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同年の『ユージュアル・サスペクツ』で驚異的な存在感を魅せつけ
1997年の『L.A.コンフィデンシャル』
1998年の『交渉人』で大ブレイク。
そして1999年の『アメリカン・ビューティー』では
アカデミー主演男優賞を受賞。
泣く子も黙る大スターになりました。
しかしながら本作での演技は奇跡の名演といっていいでしょう。
登場シーンからラストシーンまで
全く隙のない演技を魅せてくれます。
ちなみに役名のジョン・ドウは
英語で名無しの権兵衛という意味なのだとか。


日本人には理解しづらい『七つの大罪』とは?



本作は『七つの大罪』をモチーフとした連続殺人事件を描いています。
『七つの大罪』とはキリスト教において罪の根源とされる
7種類の悪しき感情や欲望を意味します。
ちなみにカトリックでは『七つの罪源』と訳されているようです。

「大食」
むやみやたらに食べる必要以上の食欲。
悪魔の名はベルゼブブ(Beelzebub)

「強欲」
強く何かを欲しいと思う気持ち。
悪魔の名はマンモン(Mammon)

「怠惰」
なまける事。
悪魔の名はベルフェゴール(Belphegor)

「肉欲」
異性に対してみだらな感情を抱く事。
悪魔の名はアスモデウス(Asmodeus)

「高慢」
人よりすぐれていると思い上がって、人を見下す事。
悪魔の名はルシファー(Lucifer)

「嫉妬」
僻み(ひがみ)、妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)の感情。
悪魔の名はレヴィアタン(Leviathan)

「憤怒」
激しい怒り。怒りを爆発させる事。
悪魔の名はサタン(Satan)


以上の七つの悪しき感情や欲望は人間を堕落させ
罪を犯す源であるという教えがあります。

本作に登場する犯人は
『自分は神に選ばれし人間』と思いこみ
人間社会への警告として
勝手に決めつけた罪人を断罪していくという
異常な連続殺人事件です。


さてここからが本題です。
この作品を『七人殺し』の話と勘違いしてる人が多いのですが
犯人のジョン・ドウの目的は『七つの大罪』を世に知らしめる事であり
殺人は目的達成への手段でしかないという事。
『被害者に懺悔させる事=殺人』ではないのです。
ちなみにジョン・ドウは罪のない人間も殺します。
それは彼にとって『断罪』にカウントされていないんですよね。

日本人にとってはここまで『宗教』が身近なものではありませんから
『七つの大罪』をモチーフにした殺人と言われても
いまいちピンとこないという人が多いのではないでしょうか?
本作の奥深いところでもあり理解しがたい部分です。
ここを肝として作品を見直すと、また違った一面が見えてきます。

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さてここから思いっきりネタバレでいきます(笑)

最初の被害者は「大食」の罪。
その被害者は醜く怪物のように太った男であり
銃を突きつけ死ぬまで食べ物を食べさせて殺します。
犯人は二度も買い物(食物)をしており、その異常性と
強いメッセージをサマセットは感じます。これが始まりであると。

次の被害者は「強欲」の罪。
被害者は多くの犯罪者を世の中に野放しにした悪徳弁護士。
すんなり殺すのではなく1ポンドの肉を被害者自身に切り取らせ
結果死に至ります。

三人目は「怠惰」の罪。
麻薬の売人を1年間ベットに縛り付け
死なないように薬を投与し続けながらミイラを作り上げるという
なんともおぞましい犯行。
被害者は生きていますが
日の光を見ただけでショック死するであろうという極度の衰弱状態。

四人目は「肉欲」の罪。
被害者は性病を持った娼婦。
巨大なナイフが付いたペニスバンドを罪のない男に装着させ
銃で脅しながら娼婦と性交させます。
当然娼婦は絶命。

五人目は「高慢」の罪。
女優の皮を剥ぎ、鼻をそぎ落とした上で包帯で治療。
右手には電話、左手には睡眠薬の瓶を糊付けして
その顔で生きながらえるか、死ぬかを本人に選択させます。
被害者は自殺を選択。(犯人は生死に興味がない)


さてここからです。
残された罪は「嫉妬」「憤怒」となりますが
ここで犯人は思い切った行動に出ます。

なんと警察に出頭するのです。

そうなんです!
この映画の素晴らしさは観る者を常に裏切っていく展開!
アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの本に最大級の拍手!
制作時、観客のターゲット層に対して内容が暗すぎると
いくつか脚本の変更を提案されたらしいのですが
それを跳ねのけ完成させたこの脚本。。。
もうお見事としか言い様がありません。

真犯人であるジョン・ドゥは警察に出頭し
『残りの二つの死体の在処をサマセットとミルズだけに案内する』という
なんとも不敵な提案をします。
そしてこの条件を飲まなければ精神異常で裁判を押し切ると。
サマセットとミルズはこの条件を飲まざるをえない状況なわけです。
残り15分を切ろうかという時間になっても結末が見えない!

うーん。。。やはりこの先の結末は書かずにおきましょう。
残りの「嫉妬」「憤怒」がどのように展開されるのかは。
先ほど書いた『七つの大罪』の説明を読んだ上で
この映画の結末をご覧下さい。
この作品がいかに絶望的であり
見事な脚本であったかを感じる事ができるかと思います。
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色あせない映像とセンセーショナルな脚本


個人的な意見で申し訳ありませんが
この『セブン』は大好きな映画ベストテンと聞かれたら必ず入る作品です。
この映画にはなんといいますか奇跡があって
視覚的に攻めてくるダークで強烈なインパクトと
刑事という異常な世界で仕事をする者の苦悩
そして知的な犯罪者の異常性を震え上がらせるように描いた脚本
名優たちの無駄のない演技と極力コンパクトに仕上げた編集
全編で感じる音楽のセンス。。。
特にサマセットが図書館で調べ物をしている時に流れる
G線上のアリアなんて胸がギューッと締め付けられます。
それらの要素が一つの塊となって胸に迫ってくるのが
この『セブン』という作品。
デヴィッド・フィンチャーは『この作品はホラーだ』と言っていますが
ホラー映画としても一級品の仕上がりと言えます。

あまたの映画(日本のテレビドラマもしかり)に模倣されたオープニング!
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流れるはナインインチネイルズ「クローサー」のリミックス!
エンディングで流れる「ハーツ・フィルシー・レッスン」
デヴィッド・ボウイのアルバム『アウトサイド』に収録されている名曲!
何度も言いますが20年という時間を全く感じさせない大傑作!
デヴィッド・フィンチャーのカラーが完成した
無駄のない完璧な映画をご堪能ください!

美しい暗闇を堪能するにはブルーレイで!
全然違うから!








[ 2014/08/13 20:49 ] サスペンス | TB(0) | CM(2)

『ひなぎく』 女の子映画の決定版!自由への暴走!カワイイは正義か?チェコ・ヌーヴェルヴァーグの代表作

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『ひなぎく』
Daisies
Sedmikra'sky



監督 ヴェラ・ヒティロヴァ

1966年
チェコスロヴァキア
75分



今回紹介する作品は『ひなぎく』です。
ミニシアターで上映していたので観に行ってきました。
この作品は1966年製作のチェコ映画なのですが
暴力的なほどカラフルなビジュアルと
支離滅裂なストーリーもあってか
一部ではカルト的な人気があります。
カワイイ映像、ファッション、メイクは今見ても新鮮で
伝説の女の子映画と呼ばれている作品です。
コメントを寄せているのが小泉今日子、カヒミ・カリィ
野宮 真貴(ピチカート・ファイヴ)岡崎京子(漫画家)など
いわゆる『女』というジャンルで成功している著名人。

しかしこの作品・・・
『カワイイ!』だけじゃ済まされない
一筋縄ではいかない映画です!


自由への暴走!カワイイは正義か?チェコ・ヌーヴェルヴァーグの代表作


えー、今回はあらすじを省略して書きたいと思います。
というのも『物語』として必要なものが
あまりに欠落している為(笑)
随所に見られるイメージ映像や
不可思議な言動、行動を
一つの文章に書き出すのは至難の業!

簡単に説明すると

自由奔放な女の子二人が
ありとあらゆるハチャメチャを繰り広げ
最終的にどうなっちゃうの?
という作品です。

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さてさて映画の感想。

問答無用のカワイイの嵐!
カワイイは正義!
だから女の子は最強!


しかし
これは一体。。。
なんなのだろう?(笑)

キラキラした映像が素敵!
会話がキュート!
髪型やファッションがカワイイ!

といった印象の作品なので
会場には服飾系の学校に通ってそうな女子がチラホラ。
しかし終わってみると寝ている子が(笑)

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そうなんです。。。この作品。。。
物語が超絶に難解なのです。
75分間、ずーっと意味不明!
カワイイ!だけを期待して観に来た人にはそこそこ辛い(笑)
映画をアートとして楽しめる感覚と
物語をある程度深読みする感覚が必要なのだと思います。
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華やかな映画の根底にある『冷戦時代』の重苦しさ


この映画の根底には『戦争』があり
映画が作られた1960年代はまさに冷戦の時代。
当時のチェコはソビエトの圧力を強く受けており
社会主義体制を敷かれていました。

以前紹介した『存在の耐えられない軽さ』では
1968年に起こった『プラハの春』を描いています。
『プラハの春』とは自由を求めるチェコスロバキアと
共産主義ガチガチのソ連が衝突して
結果、ソ連軍により弾圧されたという事件。
といってもこの作品は戦争映画ではなく
その時代を生きた人々の『ラブストーリー』。

そしてこの『ひなぎく』
1966年に国内で一旦公開された後、すぐに上映処分を受けました。
それだけでなく、監督のヒティロヴァは政治的検閲によって
映画制作を禁止されてしまったのです。
『え?なんで?こんなにカワイイ映画なのに?』と思うかもしれませんが
物語を深読みする事で、弾圧するソ連への批判や
その社会で生きているチェコの人々の自由への欲求を感じる事ができます。
そもそも映画の冒頭が爆撃機の映像ですから。


マリエ姉妹(姉妹かどうかは不明)が自由奔放にスクリーンではしゃぎ
お腹がすいたら男をたぶらかして飯をおごらせ
欲のままに手づかみでケーキを食べまくり
お酒をガブ飲みして大騒ぎする姿は
世界への反乱のようでもあり
存在自体が『自由』の象徴のように感じられます。

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そしてその『自由』にも限界があり
人間でいる以上、社会に順応する事が必要であるという
『自由という名の苦痛』も描いている事に気付かされます。

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不思議な響きのあるチェコ語で繰り広げられる
彼女たちの不可思議な会話にもそれは見え隠れします。

「誰も私たちに気がつかないわ」
「私たちはいないのかしら?」


自由そのものが否定されていた時代です。
彼女たちこそ『自由』の象徴なので
街の人々は彼女たちの存在を感じていないという事は
『この街には自由を感じれる人はいない』という事なのかもしれません。

そして突然に詩的な言葉

『匂う。通り過ぎる人生の匂い』

自由の素晴らしさをカラダいっぱいで表現する彼女たちですが
ふとした瞬間に感じた明日という未来への不安。
言葉のチョイスはこの映画の魅力でもあります。

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関係ありませんが『ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、私たちはダメ人間』ってセリフで
筋肉少女帯の『踊るダメ人間』を思い出しました(笑)

そして映画を締めくくる言葉

踏みにじられたサラダだけを
可愛そうと思わない人にこの映画を捧げる


この言葉には一体どのような思いが込められているのか?
オシャレ映画の定番となっている本作ですが
決して『カワイイ!』だけじゃない深さがあります。
機会があったら是非ご鑑賞を。








[ 2014/08/03 15:35 ] カルト | TB(0) | CM(0)