『青いパパイヤの香り』 夏に観たい映画!ベトナムへの愛が溢れるトラン・アン・ユン監督のデビュー作!

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『青いパパイヤの香り』
the Scent of Green Papaya

監督 トラン・アン・ユン

1993年
ベトナム・フランス
104分



『青いパパイヤの香り』を紹介します。
トラン・アン・ユン監督『シクロ』でヴェネツィア国際映画祭のグランプリ受賞。
村上春樹のベストセラー小説を映画化した『ノルウェイの森』でも話題に。
ちなみに本作はトラン・アン・ユン監督のデビュー作です。
カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)
セザール賞新人監督賞を受賞
アカデミー外国語映画賞にもノミネートされました。



言葉は少なく、ひたむきに生きるムイの姿が可愛い!


サイゴンの資産家の家に
10歳の少女ムイが奉公人として雇われて来た。
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裕福そうに見える家庭だったが
仕事もせず家出する癖がある父と
家計を支え布地屋を営む母
家に寄り付かない長男
家庭環境に苛立つ次男
可愛げのない三男
毎日お祈りばかりしている祖母といった
問題の多い家庭なのであった。

長年この家に仕えている年寄りの女中は
ムイに朝食の用意を始めることを教える。
何事も真面目に取り組むムイは
料理、掃除を手際よくこなしていくのであった。
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ある晩、長男の友人クェンが一家を訪れ
ムイは彼にひそかなあこがれを抱く。

やがて10年。

ムイは新進作曲家で長年憧れていたクェンの家に雇われる事に。
彼もいつしかムイの素朴な魅力に惹かれていく。



なんとも不思議な映画です。
とてもセリフが少ない作品です。
特に大人になったムイはほとんど喋りません。
これといって物語に波がなく
ベトナムの魅力を伝える映像とともに
静かにゆったりと時間は過ぎていきます。
ほのかに中毒性もありつつ。
東洋人にしか出せない美しさ
ミステリアスな雰囲気が魅力的。
トラン・アン・ユン監督のベトナムへのを感じる
アートな作品です。

性的な描写が全くないにも関わらずエロティックな作品


まあなんといっても幼いムイを演じるリュ・マン・サンの存在感!
彼女の可愛らしさがこの映画をグイグイ引っ張ってくれます。
出来上がった料理を真剣な顔で運ぶムイがとても健気。
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手際よく働く女性ってなんというか
それだけで絵になるというか美しく見えますね。


この映画、奉公人としてやってきた少女の
シンデレラストーリーのようにも見えますが
どうやらもっと深いところに魅力がありそう。

この映画はものすごく『エロティック』な作品。
といっても性的な描写は一切ありません。
何かを連想させる描写があちこちに散りばめられています。

タイトルにもなっている青いパパイヤ
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幼いムイはその実に魅せられ
もぎ取られた茎から流れ出す白い樹液を眺めます。
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たぶん変態なんでしょうね。この監督。好感が持てます。
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っていうかこの触り方がもうエロい。


また小さな生き物への好奇心
ご飯を食べながら何を見ているのかと思ったら
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砂糖を運ぶアリ。

庭で見つけたカエル。
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小さな生き物を愛する姿は
幼いながらも母性を感じさせます。


やがて大人になったムイ(トラン・ヌー・イエン=ケー)
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なんか・・・突然いい女になりました。
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ってかまだアリ見てますけど・・・

汗ばんだ体を濡れ布巾で拭くシーン。
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もうこうなってくると裸よりエロい。

そうそうこの映画
とっても湿気が多いというか
湿度の高さを感じさせる作品でもあります。


ちなみにトラン・ヌー・イエン=ケーは監督の奥さんです。
『青いパパイヤの香り』に出演後、監督と結婚したのだとか。
その後も同監督の映画には必ず出演しています。



青いパパイヤってどんな味?魅惑のベトナム料理!



奉公人としてやってきた次の日の朝
早速教えられたのは朝食の準備です。
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まーこのベテラン女中の手際の良さ!
1分かからず1品炒め物を作っちゃいます。
しかも美味そう!

大人になったムイ。
もはやプロ級の腕前!
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なにこれ!美味そう!

朝はちゃんとパン。
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お腹すいてきた…。

もちろん青パパイヤも登場。
皮をむいた青パパイヤを包丁でザクザクと縦に切れ目を入れ
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それを削ぐように包丁を動かすと細い千切りに!見事!
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甘辛いっぽいソースをかけて…これはサラダですね。

嫁のブログでこのレシピの再現に挑戦しておりますので
こちらもどうかチェックをお願いします。
『かてmemo』
映画「青いパパイヤの香り」
青パパイヤのサラダ(ゴイ・ドゥー・ドゥー)



トラン・アン・ユンの芸術的センスの光る
美しい映像と優しい音楽。
ベトナムののんびりした時間の流れを感じさせます。
一人の女性の成長を描いたちょっと幸せな気持ちになれる作品。
夏に観たくなる映画です。








[ 2014/06/22 11:59 ] ドラマ | TB(0) | CM(4)

『ベティ・ブルー』 壊れていく愛を描いたセンセーショナルな作品!一時間という膨大な未公開シーンを追加した正真正銘の完全版!

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ベティ・ブルー
(インテグラル リニューアル完全版)
37°2 le matin


監督 ジャン=ジャック・ベネックス


1986年
フランス
185分



今回紹介するのは『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』の完全版です。
1986年にフランスで製作された映画なのですが
世界中にセンセーションを巻き起こした
衝撃のラブ・ストーリーです。
なんと約1時間の未公開シーンを復元!
185分という大作に仕上がっています。
大抵この手のノーカット版というのは
無駄なシーンが継ぎ足されてしまって
ダラダラとしたものになりがちですが
本作は一切無駄なシーンが存在しない
完璧な『完全版』と言えます。
びっくりするくらい長いけどね!

ずっと一緒にいられれば幸せだと思っていた なのに壊れていくのは何故?


海辺のコテージで一人暮らしをする中年男性のゾルグ。
彼は家主から言いつけられた雑用の仕事で生計を立てていた。
ある日、彼は自由奔放な少女ベティと出会う。
激しく惹かれあうふたりは、セックスに耽る毎日を過ごした。
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家主の言いなりで生きるゾルグを軽蔑し始めたベティは不満をぶちまけ
怒りにまかせて家財を窓の外に投げ捨てる。
ダンボールを捨てようとした瞬間、ゾルグは彼女を引き止める。
その中にはゾルグが過去に書きためていた小説が入っていたのだ。
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ベティは一晩中小説を読みふけり、ゾルグの才能を称賛する。
尊敬するゾルグが家主に馬鹿にされているのが耐えられないベティは
「彼は偉大な作家よ!」とわめき、家主を二階から突き落とす。
そしてついには家を全焼させてしまうのだった。

二人は逃げるように友人が住むパリへ。
二人の新生活が始まる。
どうしてもゾルグの才能を世間に知らしめたいベティは
彼の小説を出版社に売り込もうと奮闘するが
どこに送っても良い返事がない。
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ベティの純粋な心は徐々に壊れていく。
そして奇妙な行動が目立つようになるのだった。




打ちのめされる一本。
この映画にはある意味『奇跡』が存在していて
一見無意味に感じるブツ切りのシーンですらセンチメンタル。
見事としか言いようがない美しい色彩で魅せてくれる
美しくも枯れた風景と魅力的な登場人物。
いつまでも耳に残る音楽、ちょっとした日常のドラマ性。
バグダッド・カフェが好きな人ならピンとくる感じがあります。
ただこの映画にはバグダッド・カフェにはない激しさがあります。
冒頭から濃厚なセックスシーンですし。さすがフランス。

ベティを演じるベアトリス・ダルのエキセントリックな存在感!
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もうとにかく殺人的に可愛い!
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顔、体型、仕草、言動、そして奇行!
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この映画でのハマリ具合が絶頂すぎて
他の映画ではベティ以上の当たり役がないのが残念です。
それほどこの映画でのベアトリス・ダルは神がかり的魅力。
ちょっと水原希子に似てるなーとか思っちゃいましたが(笑)
これほど魅力的で哀れなヒロインが他にいるでしょうか?
壊れていくベティを見事に演じています。
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ゾルグを演じるジャン=ユーグ・アングラードも素晴らしい!
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女性から見たら彼の優しさや包容力にメロメロになるんじゃないでしょうか?
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』でのジュード・ロウも似たようなポジションでしたが
もう規格外!格が違います(笑)

これから観るならインテグラルがおすすめ


『愛と激情の日々』はベティのエキセントリックさを観る映画であり
『インテグラル』はゾルグのシーンを大幅に追加する事で実現した
ベティと出会った男の物語です。
本作で初めて『恋愛映画』として完成した感じがします。

しかしこれが『愛と激情の日々』のファンにしてみると
やや複雑な気持ちになるのだとか。
追加されたのはゾルグの優しさやベティへの気持ちが強く伝わるシーンが多く
映画の深みにつながっている事は間違いないのですが
それが『男の言い訳』に見えるという事なのでしょう。

しかし断言します。

『インテグラル』を観るべきです!

ベティに振り回されているだけの気弱な男のように見えますが
本当に激しいベティに翻弄されていただけなのか?
優しさゆえの『弱々しさ』なのか?
これがゾルグの愛の形なのでしょうか?

『インテグラル』を観終わった時に違う印象が残りました。
ゾルグにも熱く激しい心があったのだという事を。

正反対のように思える二人ですが
実は似た者同士だったのではないのかと。
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初めは情欲の関係であった二人ですが
ゾルグの小説を読んだ日から彼を尊敬するようになり
その才能を世間に知ってもらいたいと思うようになり
彼の子供を産みたいと思うようになり・・・
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ベティはどんどんゾルグに依存していくわけですが
ゾルグはそんな彼女をどんどん愛しく思うようになります。
つまり彼もまたベティに依存していったのだと思うのです。

ゾルグは、ベティの全てを受け入れる覚悟がありました。
彼女を住みにくい世界から守ろうという優しさは胸を締め付けます。

彼女が間違いを犯すたびに自分を責めるゾルグ。
愛するベティを理解し、傷つかないように
そしてもっともっと彼女を愛そうとするゾルグ。
彼女が満足できるように。
それは実に男らしい強さ。
終盤の彼の行動は涙が出るほど。

そこを感じ取らずに『インテグラル』を否定してはいけません。

楽しかった日々、傷つけあった日々
激しく愛し合った日々が二人をゆっくりと通り過ぎます。
そして最後の最後で呼吸が苦しくなるほどの悲劇が待っています。

特にラストシーンは胸が締め付けられます。
観終わった時、『どうにかできなかったのか?』という
この映画でしか味わえない悲しさがあります。

さて、皆さんはどのような感想を持つのでしょうか?
本作を観たという人と話してみたいなーという
不思議な気持ちにさせる映画です。







[ 2014/06/03 21:18 ] ラブストーリー | TB(0) | CM(4)