『ビデオドローム』 デヴィッド・クローネンバーグ監督作品!80年代を代表する超難解カルトムービー!延々繰り返される悪夢のような展開に耐えられるか?

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ビデオドローム
Videodrome

監督 デヴィッド・クローネンバーグ


1982年
カナダ
87分




今回紹介するのは『ビデオドローム』という映画です。
監督はデヴィッド・クローネンバーグ。
『スキャナーズ』『デッドゾーン』『ザ・フライ』『裸のランチ』などが
代表作と言われていますが
この『ビデオドローム』ってのがまたとんでもない作品です。
あまりに難解なため、製作費の半分も回収できなかったという
興行収入的には大失敗作なのですが
ビデオ化されてカルト映画として人気に火がついたのだとか。

町山智浩『クローネンバーグのすべてが詰まっている』と言わしめた
80年代を代表する超難解カルトムービー。
さてどんな映画なのでしょうか?



観たら最後!ビデオドロームの世界から逃げ出すことはできない


ケーブルテレビ局の社長を務めるマックスは
視聴者を熱狂させる刺激的な映像を日々探し求めていた。
セックス、暴力などを扱った過激なものである。
ある日、『ビデオドローム』という番組の存在を知った。
内容はひどいもので、物語は無く延々と拷問や殺人を映し出すもの。
いわゆるスナッフビデオというジャンルのもの。
マックスは出処のわからないその映像に興味を持ち
何とか自分の番組として手に入れようと考えるが
何者が、何処で、どういった趣旨で作っているのかもまるで掴めず
全てが謎に包まれていた。
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彼とともにビデオを観たガールフレンドのニッキーは
被虐的な体験に対する興味から一人でピッツバーグに向かい
『ビデオドローム』に出演しようと試みる。
マックスは映像の生みの親と思しき教授に接触し
ニッキーを取り戻そうと目論むが
教授に会うこともできず取り合ってもらえない。
ところが後日、教授からビデオテープが送られてくる。
そこには驚くべき内容が記録されていた。





あー!もうわけわかりません!
難解というよりも映画として自由すぎる!
簡単に説明すると映像作品『ビデオドローム』を見たものは洗脳され
日常生活でも幻覚を見るようになり
やがてマインドコントロールされていくという内容…。
いや…たぶんそういう内容だと思います。
というのも何度観たところで理解できないんですよねー。
ややこしい話なのに説明不足&急展開に振り回されます。
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不条理で気味の悪い物語を
インパクト大のグロテスクな描写でぶっちぎる作品という感じ。
そいういう意味ではクローネンバーグ節が爆発
ちょっとでもグロがダメな方には絶対おすすめできません!
※時代が時代なので作り物感はハンパないのですが


主役のマックスはジェームズ・ウッズです。
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この俳優大好きなんです。
何がいいって顔がいい!
神経質そうで目つきが悪い!
72年、エリア・カザン監督『突然の訪問者』で映画デビューした後
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などで注目され
『サルバドル/遥かなる日々』ではアカデミー主演男優賞にノミネート。
社会派、クライムサスペンスなどに出演する事が多く
名バイ・プレイヤーとして活躍する俳優です。
本当によく見かける顔なので知ってる人も多いのでは?
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凄く頭がいい事でも有名なジェームズ。
IQ180の高い知能の持ち主!
『世界で最も頭のいい10人』の1人に選ばれた事もあるのだとか。


ニッキーを演じるのはデボラ・ハリー!
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デボラといったら1976年にデビューしたロックバンド
ブロンディのボーカルです!
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ニューヨークパンク創成期のバンドで
CBGBというライブハウスで人気に火がつき
デボラのキャラクターとキャッチーなサウンドで
あっという間に世界中が注目するバンドになりました。
『ハート・オブ・グラス』『ラプチュアー』『夢見るNo.1』といった
ディスコ、レゲエなどを大胆に取り入れたサウンドは今聴いても新鮮。
バンド以外でもソロ活動で5枚のソロアルバムを発表して
その後、女優としても活動しました。

実はブロンディの大ファンなんです。来日公演にも行きました。
歌いながら観客に靴をぶん投げたのを覚えています(笑)
でも映画は観てなかったんですよねー。なんでだろう?
ようやく観てみたら激カルト映画で驚きましたが(笑)
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アブノーマルな趣味をもつ女を演じているのですが
妙に似合っていてハマリ役だと思います。
なかなか色っぽいシーンがあります。
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唇のアップもエロい!

ヒロイン役がブスって書いてる人もいましたが
ブスじゃないでしょーよ!
顔立ちはミシェル・ファイファー系だし!
あ、デボラの方が13歳も年上だけど…。


欠落や矛盾を無視して突き進む不条理映像


本作の見所といったらやはりこだわり抜いた映像でしょう。
クローネンバークのメッセージ(?)を感じる
なんとも奇妙でグロテスクな映像の数々!
特殊メイクはマイケル・ジャクソン『スリラー』でお馴染み
リック・ベイカーが手がけています。
それがもうリミッターを振り切っているので
時間とともにストーリーがどうでもよくなっていくという。
理解しようと真剣に観ていただけに絶望的な気分になりました。

例えばこういったシーンがあります。

粘土の壁の前で拷問をうける女性のビデオ。
※しかも粘土には電流が流れているのだとか。何故!

テレビを見せ続ける事で、救いを得る事ができるのではないかという
薄気味悪い宗教めいた組織。

※今で言うところのインターネットカフェみたいな感じ(?)

マックスの腹にあいた穴。
その穴に差し込まれるビデオテープは生き物のように脈打つ!

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※グロなのでモザイクかけました。

モゾモゾ動く血管が浮き出たテレビ。
そのテレビにムチをうちこむマックス。

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もうやめて!
笑っちゃうくらい悪夢!



本作では『テレビ』がテーマになっていますが
現代では『インターネット』が近いのではないでしょうか。
『人類に対する警告!』なんて言うとカッコよく聞こえますが
基本的には悪ふざけです(笑)
テレビが人間に及ぼす有害な部分を
彼ならではのグロ映像で延々と見せるという
SF要素の強いホラー映画なのですが
まーよくもこれだけ好き勝手に撮影したものだと感心しました。
根底には皮肉がたっぷりですが悪趣味そのものです。
このやりすぎ感がマニアにうけたのでしょう。
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この映画の怖さはグロ描写でも薄気味悪い物語でもなく
『この監督はいったい何を考えてるのだろう?』という不気味さ。
次々巻き起こるわけのわからない展開に恐怖しました。
観る勇気がある人は是非是非!
ちょっとやそっとじゃ理解できないので
覚悟して観てくださいね!








[ 2014/04/14 00:01 ] SF | TB(0) | CM(4)

『犬神家の一族』 金田一さん!事件です!謎めいた遺言書から始まる一族の争い!何度も観たくなる名作

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犬神家の一族

原作  横溝正史
監督  市川崑


1976年
日本
146分



市川崑監督による『金田一耕助シリーズ』記念すべき一作目!
犬神家の一族です!
1976年に公開された日本映画です。
これがまたとんでもない大傑作なのです!
今更ながら横溝正史・市川崑・石坂浩二という
日本映画史に残るトライアングルを実現した角川映画に拍手!
この作品がなければシリーズ化されなかったのですから!


第1回報知映画賞作品賞
1976年キネマ旬報ベストテン第5位、読者選出第1位

第68回毎日映画コンクール日本映画ファン賞
撮影賞(長谷川清)、音楽賞(大野雄二)、録音賞(大橋鉄矢)

第19回ブルーリボン賞助演女優賞(高峰三枝子)、助演男優賞(大滝秀治)



華々しい受賞を誇る名画ですが
それ以上に記憶に残る作品です!


ちなみに『もっと映画な生活!』では以下の4作品を紹介しました。
 ・悪魔の手毬唄
 ・獄門島
 ・女王蜂
 ・病院坂の首縊りの家

この記事とともに楽しんでいただけたら幸いです。


金田一さん!事件です!謎めいた遺言書から始まる一族の争い


昭和22年、犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛が他界。
莫大な財産の相続について遺言書が残されていた。
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犬神家の顧問弁護士である古館の助手の若林は
探偵である金田一に『相続にまつわる厄介事』について相談する。
しかし、若林は何者かに毒殺されてしまうのだった。
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佐兵衛は正式な妻を持たなかったが
松子、竹子、梅子という三人の娘がいた。
姉妹にはそれぞれスケキヨ、スケタケ、スケトモという
息子がおり、佐兵衛は全ての家族が揃った時に
遺言状を公開しろと弁護士に指示をしていた。
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古館は金田一を連れて一族の元へ行き、遺言状が開けられる。
遺言状には『犬神家の全財産を野々村珠世に相続する。
ただし、珠世が佐清、佐武、佐智と結婚した場合に限る』と記されていた。

珠世とは佐兵衛の恩人、野々宮大弐の孫であり
犬神家とは関係のない人間である。
三姉妹にとっては到底納得できる話ではない。
しかし珠代がスケキヨ、スケタケ、スケトモの誰かと結婚する事が
財産相続の条件である以上、黙っている三姉妹ではない。
珠代をめぐり犬神家の一族の欲望にまみれた争いが始まるのだった。
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犬神佐兵衛の怨念とも言うべき不吉な遺言書。
案の定、血みどろの殺害が繰り返される事になる。





っくー!たまらん!
日本映画を変えた娯楽大作のパイオニア的映画です!

本作のジャンルは『本格ミステリー』という事になりますが
『ミステリー』『サスペンス』だけにとどまらず
『恐怖映画』としても一級品なのです!
子供の頃は怖くて観れませんでした(笑)

『映画史に名を残す映画を撮る!』という角川映画の意気込みは凄まじく
『鬼気』『妖美』『愛憎』という
横溝正史の世界観を見事に映像化。
『追い詰められた人間がいかに恐ろしいか』を見せてくれます。

殺害方法もインパクト大で
犯人に返り血が飛び散る演出や
犯人の強いメッセージを感じさせる殺害後の偽装工作!
ストップモーションやハイキー処理(コントラストが強い白黒映像)など
市川崑ならではの映像遊びが散りばめられた殺害シーンは必見!
ただ残酷なだけでなくどこか芸術的。
市川崑だからこそ成し得た映像と言えます。

ホラー映画というと『アイデア一発勝負』『低予算』といった
B級な作品を思い浮かべてしまう人も多いでしょう。
本作は『恐怖映画』『超A級娯楽作品』として完成させた
まさにジャパニーズホラーの金字塔!





全てはここから始まった!金田一シリーズの住人たち


主役はもちろんこの人!
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石坂浩二!
金田一耕助=石坂浩二を決定づけた映画です。

市川崑の描く金田一耕助はどこかフワフワしており
演じていた石坂浩二もどこか『天使』のイメージがあるのだとか。
言われてみれば全ての作品を通して天使のような存在です。
悪を憎む正義感はあれど、犯人に対して非常に同情的。
金田一耕助は刑事ではなく探偵。
真実を知りたいだけなんですね。
石坂浩二の『本陣殺人事件』『黒猫亭事件』も観たかったな。。。

飯を食いながら
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家系図!
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金田一シリーズの名場面の一つ。


島田陽子が演じる珠世の美しさ!
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その美貌は儚く怪しい!

奇しくも一族を狂わせる中心人物となる珠世の
絶対的な存在感は鳥肌ものです。


犬神の三姉妹を演じるのが

犬神 松子 - 高峰三枝子
犬神 竹子 - 三条美紀
犬神 梅子 - 草笛光子


このメンツ!一癖も二癖もある感じ!(笑)
強欲であり、息子に対し異常なほど過保護。
それぞれが父の残した遺言書に翻弄されていきます。
特に高峰三枝子の存在感!
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こういう女優さんって最近いません。

松子の息子であるスケキヨを演じるのはあおい輝彦。
戦争で顔面を損傷した為、ラバーマスクを装着しています。
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犬神家の一族のイメージキャラクターといってもいい存在ですね。
はたしてマスクの中身は本当にスケキヨなのか?
スケキヨの異様な姿を見た竹子と梅子は疑いをかけます。


本作のドス黒い連続殺人を和らげてくれるのが
女中のおはるさん(坂口良子)です。
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もう可愛いったらない!
後に作られる金田一シリーズでも本作同様
可愛らしくのほほんとした坂口良子が良いエッセンスになっています。
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この定食屋のシーン大好き!


その他の脇役も映画を盛り上げてくれます。

柏屋のご主人、三木のり平!

『よし!わかった!』が口癖の加藤武!

ボケっぷりが最高の大滝秀治!

みんな常連ですね。すっとぼけた喋り方が最高!

忘れてはならないのが、このように呑気で普通の人々の存在が
犬神家の人々の異常さを引き立てているという事。
脇役にこだわる市川崑監督の演出は本当にお見事!
チョイ役で角川春樹、横溝正史も参加しています(笑)

他にも多数の名キャラがいるのですが
それは観てからのお楽しみという事で。
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日本映画を底上げした豪華な映像


メディアによって『日本映画の金字塔』と称される事もある本作。
同時代の邦画は予算の問題や充分な撮影日数を確保する事が難しく
『テレビドラマの延長上』というチープさが漂っていました。
『早く撮れ!』『金をかけるな!』ってのが当たり前の時代だったのでしょう。

ところが本作。角川映画が全額出資!
『必要な金ならいくらでも出す』という角川春樹の言葉の通り
かつてのチープ感が一掃され、豪華絢爛な内容になっています。

特に素晴らしいのが犬神家の大邸宅!
複雑な廊下、和洋折衷の部屋の数々
美しい襖が並ぶ超豪華な大広間!
大邸宅こそが映画の世界を作り上げているといっても過言ではありません。

犬神 佐兵衛は怪物のような人間です。
彼がこの世に残した大邸宅と遺言書。
普通の豪邸じゃダメなんです!
これくらい病的に豪華でなくては!
佐兵衛の怨念がこの大邸宅に漂っています。
今までの日本映画にできなかった『豪華絢爛』な雰囲気は
この家だけを観ても感じる事ができます。


また、本作の魅力の一つである『音楽』についても。
担当したのは『ルパン三世』などのテレビアニメや
映画のテーマ音楽を数多く手がけている大野雄二!
なんと主演の石坂浩二と慶應の同級生なんだそうです。
『犬神家の一族』の音楽を担当するにあたって
市川崑の非常に細かい指示に合わせて
スクリーンを見ながら(時には現場で書き直しつつ)
正味8時間でミックスダウンしたのだとか!
どんだけ凄いだよ。。。

画面いっぱいにタイトルが出た瞬間に流れる
メインテーマの美しさ!鳥肌モノです。
角川春樹の要望で原作をしっかり読んだ上で
感じ取った世界観を表現したサウンドは
見事に映像と重なり合っています。
同時にアルバムとしての完成度も高く
リスナーを満足させる素晴らしい作品になっています。


遺言書に記された父の怨念


佐兵衛翁は自分が残す莫大なる遺産をめぐり
三人の娘が醜く争う事を予測していたのでしょう。
可愛がっていた珠世の事を蚊帳の外に置く事も。

それは三姉妹が青沼母子に対して行った非道からも感じ取れます。
おそらく佐兵衛翁は三姉妹に対し一円たりとも渡したくないという
憎悪に満ちた思いで遺言書を記したものと考えられます。

佐兵衛翁が残した遺言書は三姉妹を狂わせるのに十分な内容でした。
欲望に翻弄され、自ら手を汚していく犯人は狂気に満ちており
なおかつ哀れ…
この哀れであるという所が横溝作品の重要なファクター。
やがて自分の犯した過ちに対し『父の怨念』を感じ
いかに父に憎まれていたかに気づかされ絶望する事になります。
このやりきれなさ…もう見事としか言いようがありません!
本作は本格ミステリー作品ですが
母と息子の愛情を描く物語でもあるという事を忘れてはいけません。
いつ観てもラストシーンは胸が締め付けられます。。。。


ミステリー作品は観る人の好みがハッキリ出るジャンル。
本作にも色々な意見があるようですが
日本映画を変えた歴史的作品である事は間違いありません。
結末を知っていても何度も何度も繰り返観てしまう
日本映画の魅力がいっぱい詰まった大傑作映画です!
映画好きなら絶対に観て欲しい作品の一つ!

近々『2006年リメイク版』のレビューも書きます!
これがまたとんでもない作品なのでお楽しみに。



過去に金田一シリーズを紹介したブログはこちら。
 ・悪魔の手毬唄
 ・獄門島
 ・女王蜂
 ・病院坂の首縊りの家






[ 2014/04/13 00:52 ] ミステリー | TB(0) | CM(2)

『ブロークン・フラワーズ』 ジム・ジャームッシュとビル・マーレイの強力タッグ!豪華な出演者にも注目のひねくれたロードムービー

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ブロークン・フラワーズ
Broken Flowers

監督 ジム・ジャームッシュ


2005年
アメリカ
106分


ジム・ジャームッシュ監督の『ブロークン・フラワーズ』を紹介。
かなり前にDVDを買ったのですが、久しぶりに観たくなりました。
ちょっぴりコメディタッチのひねくれたドラマです。
元ガールフレンド達に会いに行く一人旅を描いているので
ロードムービーと言っていいでしょう。
大好きなビル・マーレイが主演!
他にもジェシカ・ラング、シャロン・ストーンといった
なかなか面白そうなメンツが揃っています。
本作は第58回カンヌ国際映画祭において
審査員特別グランプリを受賞しました。


え?俺に息子?差出人不明の手紙から物語は始まる


コンピューター・ビジネスで成功したドン・ジョンストン。
何不自由のない生活をおくっていた彼だが
あまりに無気力な性格のせいで恋人シェリーに去られてしまう。
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そんなある日、ドンは手紙を受け取る。
手紙は彼の元ガールフレンドからで
その内容は『あなたには19歳になる息子がいる』というもの。
元ガールフレンドと言っても名前がなく
差出人の住所も書かれていない為、誰なのか分からない。
誰かのいたずらに違いないと興味をしめさないドンだったが
隣人のウィンストンの『これは運命だ』という熱意ある勧めにより
当時付き合っていた女性4人を訪ねることにする。
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気乗りしないドンだったが手探りな再会を繰り返していく。



やっぱり面白い!
この『どこにもたどり着かない感』がたまらない!
観終わった瞬間ニヤニヤしてしまいます。
かつてのジム・ジャームッシュのアートっぽさは薄れていますが
そこはかとない可笑しさが散りばめられた
なんともほのぼのとしたロードムービー。
ソフィア・コッポラの作品や
バグダッド・カフェが好きな方ならツボでしょう。



ジム・ジャームッシュは自分が作る映画について
『偶然の出来事や成り行きみたいなものを大事している』と言っています。

入念に計画を立てたとしても最高の人生は実現し得ない。
感情や人間同士の絆など神秘的なるものこそ
人生を形作り、自分を導いてくれる。


たしかに無秩序でコントロールがきかないのが人生。
この映画にはクライマックスというものがありません。
無気力な人間がちょっとやる気を出した時の
滑稽さとバカバカしさを見せてくれる微笑ましい作品です。
退屈だった毎日がちょっとだけドラマチックになった瞬間を
丁寧に描いています。


モテモテだったドン・ジョンストン!豪華な女優たち


なんと言ってもビルの存在感!というか顔!さすがの一言!
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無気力な中年男性を演じさせたら右に出るものはいません。
黙ってる顔だけでちょっと面白いんだもん。ズルい!
優柔不断で何に対しても熱くならない男のドン。
元ガールフレンドを訪ねる旅といっても
友人ウィンストンが計画したものなので
どこか他人事で事態を解決しようという気持ちが薄い(笑)
ロスト・イン・トランスレーションでも冷めた中年を演じていましたが
こういう演技はお手の物ですね。
フレッドペリーのジャージも似合う!
個人的にはそろそろエキセントリックな演技を観たいなー。



結婚してくれないドンに愛想をつかして出て行く彼女シェリー。
演じるのはジュリー・デルピーです。
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チョイ役なのに贅沢なキャスティング!



ドンの隣人であり良き友人ウィンストンを演じるのはジェフリー・ライト。
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ジェフリー・ライトって。。。バスキアのジェフリー・ライト!
全然気が付かなかった!
彼の助言が決め手となってドンの旅が始まります。
ミステリーファンなのか謎の手紙に興味津々!


そしてこの映画を彩る豪華な女優たちを紹介します。


昔の彼女その1 ローラ

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演じるのはシャロン・ストーン。
相変わらず色っぽいですねー。

レーサーであった夫は事故死。現在は未亡人です。
ちなみに露出狂の娘がいます。
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なかなか強烈なキャラなので注目です!

今は娘と二人きりで暮らしているようで
ドンの訪問を心から喜んでいるように見えます。
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和気あいあい。
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あれ?いつの間にかこんな事に?


昔の彼女その2  ドーラ

演じるのはフランセス・コンロイ。
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気難しそうな顔立ちで、ドンの訪問に戸惑っているようです。
付き合っていた頃はヒッピーだったのですが
現在は夫ロンと不動産業を営み成金ライフ。
ちなみに夫役はクリストファー・マクドナルド。濃い!


昔の彼女その3  カルメン

演じるのはジェシカ・ラングです。
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付き合っていた頃は弁護士を目指していたはずだが
現在は動物を会話をするアニマル・コミュニケーターという
いかにも胡散臭い仕事をしています。
しかもレズビアンになってしまったようです。
花束を突き返す受付の女性(おそらく今のパートナー)
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女の嫉妬って恐ろしい。。。


昔の彼女その4  ペニー

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ティルダ・スウィントンです。
以前紹介した『少年は残酷な弓を射る』で主演だった女優です。
ペニーは地図にも載っていないような荒地にあるボロ屋敷で
柄の悪そうな連中たちと暮らす不遇な生活のようです。
ドンとは良い別れ方をしなかったようで
会った瞬間から喧嘩モード。
最終的には用心棒っぽい男に絡まれちゃうし。



本作に出演する女優には妙な生々しさがあります。
ジム・ジャームッシュは本作を制作するにあたって
4人の女優に自分に息子がいると仮定して手紙を書かせたそうです。
それをもとに監督が肉付けしてキャラクターを形成したのだとか。
なかなか面白い映画のつくり方ですね。


ジム・ジャームッシュの遊び心を感じる小ネタがいっぱい!


まずはオープニング。
なにやらタイプライターを叩くような音が聞こえます。
次のショットはピンクの封筒がポストに投函される映像。
それがポストマンに運ばれ、やがて封筒は飛行機に乗り
ドンの家に届きます。
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ここまでの流れをオープニングで見せてくれるので
一気に興味が封筒の中身に集中。
当たり前の日常なのにとてもドラマチック。
こういう魅せ方が本当に上手な監督です。
The Greenhornesの60~70年代を彷彿とさせるサウンドも渋い!

『There Is An End [feat. Holly Golightly]』The Greenhornes




元ガールフレンドの家にたどり着いたドン。
車の中からお庭チェック。
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おっとバスケットゴールが!もしやこの家に息子が?
ちょっとした描写が次の展開への期待に繋がります。



ピンクの手紙から始まる物語ですが
ピンクのローブを着たローラ
ピンクの名刺のドーラ
ピンクのスウェット姿のカルメン
ピンクのバイクに乗るペニー
庭に捨てられたピンクのタイプライター

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何やら意味ありげなピンクのアイテムがたくさん!
手紙の差出人は誰なのでしょう?
だんだんどうでも良くなっていくドンに注目です。



ちょっと面白いなーって思ったのがこちら。

ローラの食卓はチキンのグリルとワイン。
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とても美味しそう!

一方ドーラの食卓には。。。
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これは…なんとも。不味そう…

夫を亡くしそれほど裕福ではなさそうなローラ
かたや夫の成功で成金になったドーラ
ところがディナーは断然ローラの方が魅力的。
このように食卓を使って人物を対照的に描くのも面白いです。



また、何度か出てくるのが自己紹介のネタ。
ドンが『ドン・ジョンストンだ』と自己紹介すると
誰もが『ドン・ジョンソン?』と半笑いで聞き返すのですが
ドン・ジョンソンって『特捜刑事マイアミバイス』
『刑事ナッシュ・ブリッジス』
の俳優の事なのかな?
たしかすげー女ったらしの俳優だったような。
それともドン・ファン(伝説上の遊び人)の事?
まあ単なる聞き間違いといった小ネタなのかも。


ラストシーンもいいんです。
具体的には書きませんが
旅から戻ったドンが『ひょっとしたら息子?』っていう青年を発見します。
ここからのシーンがどうしようもなくひどい話で笑えます(笑)

ええー!おしまいなの???っていう
小馬鹿にしたラストシーンもイイ!
うんうん。これでいいんです。
だってそもそも目的なんてない旅だったのですから。
着地点を見失ったフワフワした目線のビル・マーレイ。
『やれやれ。さて…これからどうしたものか』って顔。
本当に上手いなぁ。

最後の最後でサプライズ小ネタ!
この車に乗ってる男。。。
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ビル・マーレイの実の息子!(ホーマー・マーレイ)
ってわかんねーよ!







[ 2014/04/01 23:04 ] ロードムービー | TB(0) | CM(2)