『ジェイコブス・ラダー』 悪夢と幻覚が暴走!現実と夢を行き来してたどり着いた場所は・・・ティム・ロビンス主演のホラーサスペンス

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ジェイコブス・ラダー
Jacob's Ladder




監督 エイドリアン・ライン
脚本 ブルース・ジョエル・ルービン




今回紹介する作品は1990年に製作された
ティム・ロビンス主演のサイコスリラー映画
『ジェイコブス・ラダー』です。
この作品、前々から気になっていた作品です。
このブログを読んでくれた方からのおすすめ作品でもあります。
もう観る前から期待しちゃってます。

これは夢か?現実か?複雑に絡み合う不条理な物語


1971年、ベトナム戦争中のベトナム。
束の間の平和な時間。
ジェイコブ・シンガー(ティム・ロビンス)は
仲間たちとリラックスしていたのだが
突然敵兵が襲撃してきた。
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壮絶な銃撃戦。仲間は次々と倒れていく。
まさにあっという間の出来事だった。
仲間の生死もわからぬままジャングルに飛び込むジェイコブ。
逃げ切ることはできず何者かに腹部を刺されてしまう。

薄れていく意識の中ジェイコブは地下鉄の車内で目を覚ます。
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いつの間にかウトウトしていたのだ。
彼はベトナム帰還兵としてニューヨークに住んでいた。
不気味な幻を見るなど重い後遺症に悩んでいた。
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現在は前妻と別れ、同僚のジェジーと同棲している。
幸せな日々をおくる二人だったが
ジェイコブの幻覚はエスカレートしていき
夢と現実の区別がつかなくなっていくのだった。
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おぞましいベトナムの光景。
前妻と息子たちと過ごした幸せな毎日。
そして悪魔のような不気味な幻覚の数々。
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ベトナムの戦友が連絡してくる。
彼も同じ症状に悩まされているのだという。
全てはベトナムで始まっている。
ジェイコブは1971年のあの日に何かが起こったのだと確信。
真相を探るべく動き出すジェイコブだったが
彼はさらに恐ろしい幻覚と夢に追い詰められていく。




す・・すげぇーッ!
こりゃー凄い!

ホラーサスペンスという予備知識のみで鑑賞したのですが
この作品はそれだけではないもっと深いものがあります。

サスペンスといってもハッキリとした犯人が存在するわけではなく
ジェイコブは自身の頭の中にある何かと戦っているのです。

なぜ幻覚が見えるのか?
それにはどういう意味があるのか?


現実と夢を交互に見せる手法は鑑賞するものを混乱させ
ジェイコブの精神崩壊を体験しているような気分になります。
それはもう不気味で気色悪い幻覚ばかりで
そのエグさのせいで『この映画無理』って人が多いのではないでしょうか。

暗く重苦しい雰囲気と
時間軸を捻じ曲げた複雑な物語。
『結局何がどうなのよ!』と短絡的に観てしまうと
退屈な映画と思う人もいるのでしょう。。。

嗚呼!勿体ない!

どうか最後まで観てほしい!諦めないで!
この映画は『生』と『死』を真正面から描いているのです。

『怖い』『気持ち悪い』と食わず嫌いな人が多い作品ですが・・・

これは『悲しい』映画なのです。



ティム・ロビンスの演技力に拍手!


なんといってもティム・ロビンス!
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『ミスティック・リバー』でアカデミー助演男優賞を受賞した名優です。
『ショーシャンクの空に』の・・・と言った方がわかりやすいかな?

鬼気迫る演技!
割とノーマークな俳優だったのですが(失礼)
何かに憑りつかれたように
ギリギリの精神状態を魅せるティム・ロビンスの演技は
素晴らしいとしか言いようがないですね。

脱ぎっぷりもいい!
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ティム・ロビンスってモサーっとした雰囲気ですが
場面によってはスゲー男前に見えるという
不思議な存在感のある俳優ですね。
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セクシーで美しい同棲相手ジェジーはエリザベス・ペーニャ。
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ゴージャスではなく芯の強い女性の魅力があります。
正気を失いそうなジェイコブを心配したり
引きこもりの彼を叱咤したりと
うわごとで前妻の名を呼ぶ彼に嫉妬したり。。。
圧倒的に正しく愛する姿は美しいのですが
ジェイコブの不安定な精神をより恐ろしく感じさせます。
驚いたのですが今年10月14日に亡くなってたんですね。。。


息子のゲイブはマコーレー・カルキン。
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同年に公開された『ホーム・アローン』で人気者になりました。
本作ではあまり登場しませんが非常に重要な役です。
少年期の彼には儚げな美しさがありますね。


ルイス役をダニー・アイエロが演じています。
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『ゴッドファーザー PART II』のトニー・ロサト
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のヴィンセント
『レオン』のトニーとマフィアがらみの役が多いのですが
本作ではカイロプラクティックの医師。
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負傷兵として帰国したジェイコブは体に痛みが残り
彼を頼っています。
本作では天使のような不思議な存在です。
以前紹介した『ディナー・ラッシュ』にも出演してましたね。


あー!こいつは!
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『星の王子 ニューヨークへ行く』(1988年)で
ベタベタ頭の男を演じていた俳優!
そして『ER緊急救命室』ピーター・ベントン!
個人的に思い入れのある地味め俳優(笑)
エリク・ラ・サルって名前だったのね(知らなかった)
見れてちょっと嬉しい!



エンゼル・ハートと比較される本作 『生』『死』の間に



よくアラン・パーカー監督の『エンゼルハート』と比較される映画ですが
ナルホ!観て納得!
主人公が追い詰められていくさま
悪夢と血の匂い
そして衝撃のラストシーン。

調べてみたら製作にアラン・マーシャルの名前があります。
実はエンゼル・ハートでも制作を行っているプロデューサーです。
だから何だって話ですが(笑)共通点があったという。
そういえばアラン・パーカーの『バーディ Birdy』(1984年)も
ベトナムの帰還兵の話。

本作は旧約聖書の『ヤコブの梯子』がモチーフになっています。
※ヤコブを英語で書くとJacobとなります。
『ヤコブの梯子』は
ヤコブが夢に見た天使が上り下りしている天から地まで至る梯子の話です。
確かに本作では聖書に出てくる名前が多いので
聖書に詳しい人が見ると何か違ったものを感じるのかもしれません。

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ちなみにジェイコブは郵便局員ですが哲学者の顔があります。
エロティックなシーンは悪魔の儀式のようでありどこか宗教的。
あらゆるシーン、セリフに『生』と『死』の存在があり
先が予測できない不条理な物語と不気味な映像とが絡み合い
底なし沼に落ちていくような錯覚に。

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この映画はネタバレなしで書きたいので
非常に難しいのですが。。。



ジェイコブが徹底的に追い詰められて
もうダメだと挫けそうになるとき
心がふるえるというか。。。
訳のわからない感動があって
ちょっと泣きそうになりました。
久しぶりにゾクゾクっとくる映画に出会えたなーと思います。











[ 2014/11/29 10:52 ] サスペンス | TB(0) | CM(2)

『セブン』 サイコ・サスペンスの大傑作!『七つの大罪』をモチーフとしたセンセーショナルな犯罪を描くデヴィッド・フィンチャー監督の代表作!ブラピかっけー!モーガンさん渋ッ!

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セブン
Seven



監督 デヴィッド・フィンチャー

1995年
アメリカ
127分



今更??って感じに紹介するのが恥ずかしい
サイコサスペンスの大名作『セブン』です。
わたくしデヴィッド・フィンチャー監督大ファンなのですが
この『セブン』で完全に打ちのめされた口です。
暗闇の魔術師とも言うべき暗くトーンを抑えた不気味な映像と
想像を絶する猟奇的な事件と異常な犯罪者!
しかしながらこの作品・・・
1995年って!
もう20年近く前なの???
時の流れに恐怖すら感じております。

4週連続で全米興行成績1位に輝いた大ヒット作品ですが
今回は『七つの大罪』とは?という視点から書いてみようかと思います。
今回はネタバレ注意です!

想像を絶する『7』の呪縛 奇跡のサイコ・サスペンス・ホラー


退職まであと7日の刑事サマセット(モーガン・フリーマン)と
新人刑事ミルズ(ブラット・ピット)は、死体発見現場に急行した。
死体は醜い肥満の男。
彼は食べ物の中に顔を埋めて死んでいた。
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サマセットは死体の胃の中から発見されたプラスチックの破片と
犯人が書いたと思われる「GLUTTONY(暴食)」の文字を発見。
これから続くであろう事件の始まり感じ取っていた。
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次の被害者は強欲な弁護士。
現場には被害者の血で「GREED(強欲)」の文字が残されており
サマセットは、犯人が「七つの大罪」をモチーフにして
殺人を続けていると判断するのだが。。。




ため息が出るほど 完 璧 !
これほど刑事と異常な犯罪者の心理戦を描いた作品があったでしょうか?
。。。まあ・・・あったかもしれませんが(笑)

サマセット刑事モーガン・フリーマンが演じています。
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この映画の主役といっていいでしょう。
刑事人生を残り7日という局面で
今までの刑事人生を振り返っても感じた事のない異常性と
おそらく犯人には目的に向かって迷いなく犯罪を繰り返しているという
ベテランならではの読みで犯罪に立ち向かいます。
彼の本作で仕上がったイメージは強烈そのものであり
本作以降のモーガン・フリーマンは超売れっ子として大活躍する事になります。
制作サイド撮影前はアル・パチーノにオファーしようかと考えていたようですが
結果オーライといいますか、モーガンでよかった気持ちでいっぱいです。

ちなみに本作では『サマセット犯人説』というのもあります。
かなりマニアックな見解だと思いますので
今回のブログでは端折りたいと思います。



血気盛んなミルズを演じるのはブラッド・ピットです。
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本作ではこれ以上ないくらい彼の魅力が発揮されており
この後に撮影された『ファイトクラブ』では
さらなるエキセントリックな演技を魅せてくれます。
当時『アポロ13』のオファーを蹴って撮影に挑んだという事ですが
そのチョイスは見事に成功しましたね。
ちなみに映画後半で左腕を負傷していますが
スタントを使わずに危険なシーンを撮影し
実際に骨折していたのだとか。


ミルズの奥さんを演じるのはグウィネス・パルトロー。
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その美しさで現在では大女優として名を馳せる彼女ですが
本作での素人臭さは映画にピッタリと言っていいでしょう。
刑事のワイフとしての苦悩(鬱病といっていい程の)は
本作の結末を絶望的なものに仕上げる重要なファクターです。


ネタバレで申し訳ありませんが犯人のジョン・ドウケヴィン・スペイシー。
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同年の『ユージュアル・サスペクツ』で驚異的な存在感を魅せつけ
1997年の『L.A.コンフィデンシャル』
1998年の『交渉人』で大ブレイク。
そして1999年の『アメリカン・ビューティー』では
アカデミー主演男優賞を受賞。
泣く子も黙る大スターになりました。
しかしながら本作での演技は奇跡の名演といっていいでしょう。
登場シーンからラストシーンまで
全く隙のない演技を魅せてくれます。
ちなみに役名のジョン・ドウは
英語で名無しの権兵衛という意味なのだとか。


日本人には理解しづらい『七つの大罪』とは?



本作は『七つの大罪』をモチーフとした連続殺人事件を描いています。
『七つの大罪』とはキリスト教において罪の根源とされる
7種類の悪しき感情や欲望を意味します。
ちなみにカトリックでは『七つの罪源』と訳されているようです。

「大食」
むやみやたらに食べる必要以上の食欲。
悪魔の名はベルゼブブ(Beelzebub)

「強欲」
強く何かを欲しいと思う気持ち。
悪魔の名はマンモン(Mammon)

「怠惰」
なまける事。
悪魔の名はベルフェゴール(Belphegor)

「肉欲」
異性に対してみだらな感情を抱く事。
悪魔の名はアスモデウス(Asmodeus)

「高慢」
人よりすぐれていると思い上がって、人を見下す事。
悪魔の名はルシファー(Lucifer)

「嫉妬」
僻み(ひがみ)、妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)の感情。
悪魔の名はレヴィアタン(Leviathan)

「憤怒」
激しい怒り。怒りを爆発させる事。
悪魔の名はサタン(Satan)


以上の七つの悪しき感情や欲望は人間を堕落させ
罪を犯す源であるという教えがあります。

本作に登場する犯人は
『自分は神に選ばれし人間』と思いこみ
人間社会への警告として
勝手に決めつけた罪人を断罪していくという
異常な連続殺人事件です。


さてここからが本題です。
この作品を『七人殺し』の話と勘違いしてる人が多いのですが
犯人のジョン・ドウの目的は『七つの大罪』を世に知らしめる事であり
殺人は目的達成への手段でしかないという事。
『被害者に懺悔させる事=殺人』ではないのです。
ちなみにジョン・ドウは罪のない人間も殺します。
それは彼にとって『断罪』にカウントされていないんですよね。

日本人にとってはここまで『宗教』が身近なものではありませんから
『七つの大罪』をモチーフにした殺人と言われても
いまいちピンとこないという人が多いのではないでしょうか?
本作の奥深いところでもあり理解しがたい部分です。
ここを肝として作品を見直すと、また違った一面が見えてきます。

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さてここから思いっきりネタバレでいきます(笑)

最初の被害者は「大食」の罪。
その被害者は醜く怪物のように太った男であり
銃を突きつけ死ぬまで食べ物を食べさせて殺します。
犯人は二度も買い物(食物)をしており、その異常性と
強いメッセージをサマセットは感じます。これが始まりであると。

次の被害者は「強欲」の罪。
被害者は多くの犯罪者を世の中に野放しにした悪徳弁護士。
すんなり殺すのではなく1ポンドの肉を被害者自身に切り取らせ
結果死に至ります。

三人目は「怠惰」の罪。
麻薬の売人を1年間ベットに縛り付け
死なないように薬を投与し続けながらミイラを作り上げるという
なんともおぞましい犯行。
被害者は生きていますが
日の光を見ただけでショック死するであろうという極度の衰弱状態。

四人目は「肉欲」の罪。
被害者は性病を持った娼婦。
巨大なナイフが付いたペニスバンドを罪のない男に装着させ
銃で脅しながら娼婦と性交させます。
当然娼婦は絶命。

五人目は「高慢」の罪。
女優の皮を剥ぎ、鼻をそぎ落とした上で包帯で治療。
右手には電話、左手には睡眠薬の瓶を糊付けして
その顔で生きながらえるか、死ぬかを本人に選択させます。
被害者は自殺を選択。(犯人は生死に興味がない)


さてここからです。
残された罪は「嫉妬」「憤怒」となりますが
ここで犯人は思い切った行動に出ます。

なんと警察に出頭するのです。

そうなんです!
この映画の素晴らしさは観る者を常に裏切っていく展開!
アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーの本に最大級の拍手!
制作時、観客のターゲット層に対して内容が暗すぎると
いくつか脚本の変更を提案されたらしいのですが
それを跳ねのけ完成させたこの脚本。。。
もうお見事としか言い様がありません。

真犯人であるジョン・ドゥは警察に出頭し
『残りの二つの死体の在処をサマセットとミルズだけに案内する』という
なんとも不敵な提案をします。
そしてこの条件を飲まなければ精神異常で裁判を押し切ると。
サマセットとミルズはこの条件を飲まざるをえない状況なわけです。
残り15分を切ろうかという時間になっても結末が見えない!

うーん。。。やはりこの先の結末は書かずにおきましょう。
残りの「嫉妬」「憤怒」がどのように展開されるのかは。
先ほど書いた『七つの大罪』の説明を読んだ上で
この映画の結末をご覧下さい。
この作品がいかに絶望的であり
見事な脚本であったかを感じる事ができるかと思います。
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色あせない映像とセンセーショナルな脚本


個人的な意見で申し訳ありませんが
この『セブン』は大好きな映画ベストテンと聞かれたら必ず入る作品です。
この映画にはなんといいますか奇跡があって
視覚的に攻めてくるダークで強烈なインパクトと
刑事という異常な世界で仕事をする者の苦悩
そして知的な犯罪者の異常性を震え上がらせるように描いた脚本
名優たちの無駄のない演技と極力コンパクトに仕上げた編集
全編で感じる音楽のセンス。。。
特にサマセットが図書館で調べ物をしている時に流れる
G線上のアリアなんて胸がギューッと締め付けられます。
それらの要素が一つの塊となって胸に迫ってくるのが
この『セブン』という作品。
デヴィッド・フィンチャーは『この作品はホラーだ』と言っていますが
ホラー映画としても一級品の仕上がりと言えます。

あまたの映画(日本のテレビドラマもしかり)に模倣されたオープニング!
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流れるはナインインチネイルズ「クローサー」のリミックス!
エンディングで流れる「ハーツ・フィルシー・レッスン」
デヴィッド・ボウイのアルバム『アウトサイド』に収録されている名曲!
何度も言いますが20年という時間を全く感じさせない大傑作!
デヴィッド・フィンチャーのカラーが完成した
無駄のない完璧な映画をご堪能ください!

美しい暗闇を堪能するにはブルーレイで!
全然違うから!








[ 2014/08/13 20:49 ] サスペンス | TB(0) | CM(2)

『ヒッチャー』 ルトガー・ハウアーの狂気を見よ!ヒッチハイクから始まる究極の不条理!サイコサスペンスの大傑作!

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『ヒッチャー』
The Hitcher


1986年
アメリカ
97分



今回紹介する映画は『ヒッチャー』です。
ジャンルはサイコサスペンス、ホラーといった感じ。
脚本やプロットは超B級なのですが
ところがどっこい超必見の作品となっております。
なんといってもルトガー・ハウアーの狂気!
ストーリーなんてどうでもよくなります(笑)


ヒッチハイクから始まる究極の不条理!逃げて!逃げて!


激しい雨の降る夜、砂漠地帯のフリーウエイ。
車の長距離陸送をしていた青年ジム・ハルジーは
暗闇に立つ一人のヒッチハイカーを拾う。
ズブ濡れのその男の名はジョン・ライダー。
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世間話を始めた二人。
突如ライダーが自分は殺人鬼だという驚きの告白をする。
さらに飛び出しナイフを取り出し
『僕は死にたいと言え』とジムを脅し始めた。
運転中の恐怖の密室空間。

隙を見てライダーを車から叩き出すことに成功したジムだったが
翌朝、ライダーを乗せた家族連れのワゴン車が自分を追い越して行くのを見る。
停車したワゴンに追いついて中をのぞくと
家族連れは一人残らず惨殺されていた…。

その後も執拗にジムにつきまとうライダー
やがて警察はジムを殺人犯と思い込み
ジムはライダーだけでなく警察からも追われる事になる。

ライダーの真の目的とは?
ジムは無事に逃げ切れるのか?




最 高 !
これこそサイコサスペンス!
スピルバーグ『激突!』を彷彿させる(というか真似)
粘着質な殺人鬼の執拗な追い詰め方!
全くもって不条理な展開!
容赦のないバイオレンス&アクション!
そして…名作とは言い難い完成度(笑)
ルトガー・ハウアーを起用した事で
狂気に満ちたカルトホラーになっております。
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『ブレードランナー』のレプリカントを演じた時も
血の通っていない冷血で残酷な無表情が鳥肌ものでしたが
今回演じるジョン・ライダーは、さらに頭がおかしいという
もう手に負えないルトガー・ハウアーを見る事ができます。
ルトガー・ハウアーじゃなかったらどうなってたんでしょう。
もう彼の映画といっていいほど。
ぶっちぎりに怖いので最後までゾクゾクしっぱなしでした。


護送車で移動中。なんなく警官を皆殺しにして・・・え?嘘!
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主人公ジムの運転する車にダイブ!
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捨て身!命懸け!怖い!
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そして助手席に座って『よう』って・・・ 慌ててブレーキを踏むジム!
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飛んだ!車に滞在した時間10秒ほど!
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このテンポの良さに拍手!



いまいち印象が薄い主役はこちら
ジム役のC・トーマス・ハウエル。
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酷い目に合うバイトの兄ちゃんって感じから
追い詰められて行くほどに男らしく
魅力的になっていくのが不思議。
おそらくそういう演出なんでしょう。

他にどんな映画出てるのかな?と調べてみたところ
デビュー作が『E.T.』とありました。
えー!うそー!どこにいる?と確認しました。
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たぶんこの子です。
それどころかコッポラ監督の『アウトサイダー』の主役!
あれ!結構有名な人??

頭のおかしい奴に追われています!助けて!と通報。
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え?待って!俺じゃないって!




さらに影が薄いヒロイン・ナッシュは
ジェニファー・ジェイソン・リー。
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子供の頃から端役で映画に出ている大ベテラン。
スマッシュヒットした『バックドラフト』に出てましたね。
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今回はカフェで働くイモねーちゃん役。
ポジション的に主役と恋に落ちてもいい感じですが
そういう展開は特に用意されておらず
いつの間にか一緒に追われる身になるという
なんとも無駄のない素晴らしい脚本。

逃げ切ったー・・・とウトウトしてたら添い寝!逃げて!
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やっぱ逃げ切れませんでした。



この手の作品ってまるで興味のない犯人の生い立ち
ヒューマニズムとか恋愛要素
監督の哲学みたいな蛇足がつきものですが
本作にはそういった無駄が全くありません。!
余計な事はしない!これが一番!
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『見せない』ことで『魅せる』上手さ


この映画の素晴らしさは残酷な物語であるにも関わらず
あえて死体や残酷なシーンを映像化していない事。
それがかえって想像力を掻き立てられ
ジョン・ライダーの不気味さが引き立っています。
以前紹介した『悪魔のいけにえ』もまさにこのパターンで
低予算ゆえの苦肉の策(血ノリが買えないから)として
残酷描写を撮影しなかった事が逆に作用して
見事に恐怖を倍増させていました。

ワゴン車の中で家族が皆殺しになっているシーンも
死体を直接写すのではなく
血がポタリポタりと落ちるのを映し出した後
車をのぞいたジムの反応を見せるという手法は
これから起こるであろう恐怖へのカンフル剤になっています。

本作がデビュー作となる監督ロバート・ハーモン。
不条理で奥行のない脚本ですが(言いすぎかな?)
ルトガーの存在感と、見せ方の工夫で
他のB級映画とは一線を画する傑作になっています。
ちなみに撮影前のジョン・ライダーのイメージは
ローリング・ストーンズのキース・リチャーズだったそうです。
やさぐれたアウトローって感じでしょうか?
それはそれで面白そうですが
本作はルトガー・ハウアーの狂人的演技をチョイスして大正解でしたね。

砂漠の幽霊は死に場所を求めていたのか?


砂漠に突如現れた狂人。
ジョン・ライダーと名乗りますが
おそらく偽名でしょう。
そのミステリアスな存在はまるで砂漠の幽霊。
なぜジョン・ライダーはジムを追い掛け回すのか?
これが本作一番の謎なのではないでしょうか。
例えばこんなのはどうでしょうか?

殺人鬼としての人格がエスカレートしてしまい
やがて怪物になってしまったジョン・ライダー。
そんな自分に嫌気がさしていた時
一人のさえない青年に一杯食わされてしまった。

『小僧 やるじゃねぇか』

ここでジョン・ライダーの中に一つのアイデアが浮かびます。

彼をとことん追い詰めて
俺を躊躇なく殺せる一人前の男にしてやろう。
これは俺とお前との戦いだ。
俺を止めてみろ。


・・・とこんな感じなのかな?ほぼ憶測ですが。

でもまあジムにしてみりゃそんなの知ったこっちゃないわけです。
そりゃそうです。なんなんだよこのオッサン!ってやつです。
自分の身に何が起こっているのかも理解できないまま
逃げないと殺されるという恐怖。この不条理!
『なぜ俺につきまとうんだ?』への回答が
『自分で考えな』ですから。

誰も助けてくれないという極限状態の中
主人公ジムの中で何かが壊れ
『俺が終わらせなくては』という感情が芽生えます。
これはある意味『男』の成長を描いた物語です。
・・・いや多分偶然ですけど。

ちなみにリメイク版があるのですが(主役が女に変更されています)
これまた酷い評判。まだ観ていないのですが、観るのが怖い。
とりあえずはオリジナル『ヒッチャー』をお楽しみください。







[ 2014/07/21 18:32 ] サスペンス | TB(1) | CM(2)

『エンゼル・ハート』 極上の脚本で魅せるオカルトミステリー!ミッキー・ロークの魅力が炸裂!悪魔の罠に君は耐えられるか?

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エンゼル・ハート
Angel Heart

監督  アラン・パーカー

1987年
アメリカ
113分


今回紹介する映画は『エンゼル・ハート』です。
原作はウィリアム・ヒョーツバーグ『堕ちる天使』という作品。
オカルト要素のあるサスペンスという感じでしょうか。
ホラーっぽさもあったりとなかなかジャンル分けの難しい作品です。
本作はミッキー・ロークが主演。
個人的にはこの映画の印象が一番強い俳優です。
ロバート・デ・ニーロが出演しているというのも豪華!


何気ない依頼のはずだった… 悪魔の手に引きずり込まれていく


ブルックリンの私立探偵ハリーは謎めいた紳士サイファーから
10年前に失踪した歌手のジョニーという男を探して欲しいと依頼される。
ジョニーは戦争に従軍後、精神を病んで精神病院に収容されているはずであった。
ハリーは病院を訪れ、カルテを見せてもらうのだがそこには退院したとの記載が。
カルテに署名した医師を訪ねるとその医師は麻薬中毒であり
まともに話せる状態ではなかった。
少し時間をおいて再び医師を訪ねたハリーが目にしたのは
無残にも殺害された医師の死体だった。
これが全ての始まりでありハリーが行く先々で殺人事件が起こる事になる。




これは良くできた映画。。。
いやーこんなに雰囲気のある映画だったっけ??
観終わってからしばらく不気味な余韻に浸りました。
絶望的な物語ですが、その黒い魅力から目が離せない感じ。
そしてこの映画に漂う血の匂い!
踏み入れてはいけない領域に引きずり込まれていく主人公
そして何よりも衝撃的な結末。。。(ネタバレなので書けませんが)
今となってはこの手の結末の作品が増えてきましたが
『エンゼル・ハート』が元祖と言ってもいいのでは?
1987年の作品とは思えない鮮烈なストーリーです。
悪魔信仰という存在を世界に知らしめた作品でもありますね。
この映画の魅力は新しい『悪魔』の表現方法を魅せてくれるところ。


ハリーエンゼルを演じるミッキー・ロークの魅力が爆発!
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殺人事件の連鎖、謎が深まっていく度に
どんどん不安が膨れ上がっていくハリーを見事に演じています。
ミッキー・ロークの魅力は、ややくたびれた感のある美しさ!
時には少年のように見えたり、ものすごく男らしかったり。
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やさぐれた雰囲気は他の俳優には出せない色気です。
この映画のミッキー・ロークの印象が一番強いんですよね。
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底知れぬ不気味さを持つ依頼主サイファー。
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このデ・ニーロがいい仕事してるんですよね(笑)
すげー気持ち悪い!
長い爪でゆで卵を食べるシーンですらこの不気味さ。
うわぁ~…ってなります。

ちなみに本作でロバート・デ・ニーロが身に着けているリングは
『エンジェルハートリング』として人気があります。
これはアレックスストリーターというブランドが制作したもので
ハンドメイド感溢れる幻想的なデザインは映画業界だけに止まらず
音楽やファッション業界にも話題を呼び、
マリリンマンソンマドンナ、 アクセル・ローズ、
日本ではL'Arc~en~Ciel(ラルクアンシエル)hydeなど、
ミュージシャンが愛用していることでも有名。
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たしかにカッコイイ!


出番は少ないのですがシャーロット・ランプリングが出ています。
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イタリア映画『愛の嵐』で見せた
上半身裸にサスペンダーでナチ帽という強烈なビジュアルはあまりに有名。
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ジョニーの元恋人であり、占い師という役なのですが
とても冷ややかで陰鬱な眼差しはなかなかのインパクト。
本作はどうしてもネタバレしたくないのでもどかしいのですが
この映画で一番可哀想なのは彼女かもしれません。
最後まで観てから彼女の人生に注目してみてください。

エピファニー(リサ・ボネ)の幼いくせに
ネットリとした目でハリーを見る感じもいいですね。
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ミッキー・ロークのやさぐれた色気もそうですが
この映画には独特のエロさがあります。



映画を盛り上げるイメージカットも素晴らしいの一言!


やたらと換気扇が映し出されるのですが
これはハリーの心理状態を示す重要な映像です。
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他にも古いエレベーターの不気味な音
コントラスト強めの光と影
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血みどろの壁をタワシでこする女
顔のない兵士
水溜りを跳ねる男の子の足元
ニューオリンズのじめっとした暑さを感じさせる汗
そして何よりも血!血!血!
クライマックスでは2トンもの牛の血が天井から降るという
衝撃的な演出で世界を驚かせました。

意味のない映像かと思いきや
伏線がところどころに散りばめられているので
何度か観返す事で気づく事がいくつかあるのも本作の魅力。

いやー『エンゼル・ハート』…久しぶりに観たので
イマイチ盛り上がれなかったらどうしようと思っていましたが
もう見事に気持ちを持って行かれました。
謎が謎を呼ぶ不気味なサスペンスの名作!





[ 2014/05/26 21:15 ] サスペンス | TB(0) | CM(6)

『バートン・フィンク』 コーエン兄弟の問題作!1991年度のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、監督賞、男優賞を受賞!※今回はネタバレありです。

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バートン・フィンク
Barton Fink

監督 ジョエル・コーエン
脚本 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン

1991年
アメリカ
116分




久々にコーエン兄弟製作映画を紹介します。
とある脚本家が奇妙な事件に巻き込まれていくサスペンス(?)です。

主役の脚本家をジョン・タトゥーロが演じており
なかなかエキセントリックな演技を見せてくれます。
本作は1991年度のカンヌ国際映画祭で
パルム・ドール、監督賞、男優賞
を受賞しました。
さてどんな映画なのでしょうか?


映画界という狂人がはびこる世界に身を投じた脚本家の苦悩


劇作家のバートン・フィンクに映画の脚本執筆の依頼が入る。
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社会派の最新作で高い評価を得ていたバートンだったが
映画会社の社長は、社会派の作家である彼の話など聞こうともせず
一方的に レスリング映画の脚本執筆を書くように命ずる。

バートンは逗留するホテルの一室でその脚本を書き始めるのだが
レスリング映画を見たこともなく一向に進まない。

イライラの真っ最中、隣室から大きな笑い声が聞こえ
頭にきたバートンはフロントに『注意するように』と電話をする。
笑い声の主はチャーリーという大男だった。
バートンの苦情に怒ったかに思えたが、二人はすぐに打ち解け
いつしかお互いを信頼し合う友人となるのだった。
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一方、脚本の執筆は全くはかどらない。
社長の命令で『プロデューサーに会え』と言われ
プロデューサーには『脚本家に会え』とたらいまわしにされ
途方にくれるバートン。
そんな中、偶然にも尊敬する小説家に出くわす。
アドバイスを乞うため彼のの宿舎を訪問したのだが
彼が酒に溺れる自堕落な人間だと知る。
そしてそこで出会った彼の秘書で愛人のオードリーに好意を抱く。

社長があらすじだけでも教えろとバートンを追い詰める。
オードリーに助けを求めたバートンは
その晩、彼女とベッドを共にする。
だが翌朝目を覚ました時、彼が目にしたのは
無残に殺害されたオードリーの死体だった。
取り乱したバートンはチャーリーに相談するのだが…



???
何だこの映画は?


終わった瞬間に感じたのがコレ。
さっぱり意味がわかりません!
不条理の連鎖!
現実と非現実の境界線がなく
絶望的なほどに説明不足な脚本!
でも何だろう?この引っかかる感じ…

『理解できない=面白くない』じゃ勿体無い!

心を落ち着けてもう一度鑑賞してみます。
するとちょっとだけ内容が見えてきました。


※注意!※
今回は『ややネタバレあり』です!
謎解きというほどではありませんが
理解しにくい場所を自分なりに考察してみました。
皆さんの考える為のヒントになればいいなぁと。

コーエン兄弟の世界観を構築した代表作!ハリウッド進出作が業界批判?


この映画はバートンの日常を追うように進むのですが
それを素直に真に受けて観てしまうと痛い目にあいます!
途中から突然にサスペンスへと変化し
最終的には不条理の連鎖へと変化していくのですが
本作を鑑賞する為の最大の注意点はこちらです。

・現実と非現実の線引きが明確でない事。
・スランプにもがき苦しむ脚本家の目線であるという事。


目に映るもの全てが現実であると思ったら大間違い。
スランプになった脚本家の精神状態が
『不条理な現象』となって映し出されます。
蚊の飛ぶ音、息苦しさなんてのは序の口。
例えばバートンが体温の上昇を感じ不愉快な状態の時
部屋の壁紙がネットリと剥がれる事で表現しています。
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これがまた薄気味悪い。

また、突然襲われたスランプ状態を
先の見えないホテルの廊下や
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真っ暗な排水口へのズームアップで表現しています。
なんとも不気味で不安を煽る描写が印象的なのですが
どれも非現実への入口のように感じられます。
まるで悪夢のよう。

バートンの追い詰められた心理状態と不条理の連鎖
どこまでが現実なのか?全くもって不透明なので
見終わった時の後味の悪さは凄まじいものです(笑)
こういった観る者に対して挑戦的な物語は
デヴィッド・リンチの作品にも似ています。


人の気配がない不気味なホテル。
このホテルでの生活はバートンを精神的に追い詰めます。
ホテルの従業員はこの人
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スティーブ・ブシェミ!
さすがミスター顔芸!見事に胡散臭い(笑)
しかも何故か地下から登場!

ボケ老人のようなエレベーターボーイ(?)
インチキプロデューサー、自己中心的な社長
酒に溺れる自堕落な小説家などなど
バートンを混乱させる人物が数多く登場します。

バートンを訪ねてくる二人の刑事も歪んでいます。
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バートンがユダヤ人だという事がわかるやいなや
態度が豹変し、バートンを罵倒し
名刺を床に投げ捨てるといった露骨な人種差別。
こういった狂人めいた描写はコーエン兄弟っぽさでもあります。

映画業界の奇妙な世界に足を踏み入れた脚本家にとっては
目に映るもの全てが不条理のように感じられるのかもしれません。
つまりホテルに足を踏み入れた瞬間
彼は異次元に取り込まれてしまったとも考えられます。
しかし業界批判のようにも思える大胆な内容ですね。

時代背景が1941年のアメリカ
太平洋戦争と第二次世界大戦の直前であるというもの重要。

登場人物達の心のどこかに『戦争』があり
他人の声に耳をかす余裕が無いようにも見えます。
これから待ち受ける混乱を前にして
傑作を書き上げる為にスランプと戦う脚本家というのは
非常に馬鹿げていて滑稽なものに見えるのでしょう。
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隣に住む大男チャーリー・メドウズとは一体何者なのか?


この映画で一番の難題であり、物語を左右するチャーリーの存在。
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巨漢の俳優ジョン・グッドマンが演じています。
いくらでも深読みできる内容ではありますが
まずは二通りの見方をしてみます。

1. チャーリー・メドウズはバートンの心が映し出した分身である。

初めて会った時から意気投合し
バートンにとってなくてはならない存在となるチャーリー。
バートンが頭で作り出した幻想だとすれば
『都合のいい隣人』として納得がいきます。
そうなると殺人を犯したのはバートンという事になります。
何故殺人を犯す必要があったのか?
そもそも殺人事件さえも彼の妄想だとしたら?


2. 殺人鬼のチャーリーは実在する。

脚本家であるバートンと殺人鬼チャーリー。
二人は一般人には理解しがたい思考回路を持つ似た者同士。
初対面から意気投合した事は説明がつきます。
彼が存在するとなると部屋の女を殺したのはチャーリーという事に。
バートンはチャーリーの為に身内の家を紹介しますが
その後、電話が通じないという事実からいって
おそらくチャーリーは殺してしまったと考えられます。
殺人鬼の手口は『頭を切り落とし持ち去る』というもの。
となるとチャーリーがバートンに預けた箱の中身は・・・?

気になる箱の中身


チャーリーはバートンに『預かっていてくれ』と
奇妙な小包を置いていきます。
見るからに怪しげ。
頭を持ち去る殺人鬼の話と箱のサイズを見る限り
『切り落とされた頭』が入っていると思われますが
バートンは中身を確認しません。
部屋で死んでいた女の頭なのか?
それともチャーリーが訪ねたと語るバートンの身内の頭か?
それは謎のままです。

幻想の世界の中で巻き起こる不条理にもがき苦しみ
バートンが死に物狂いでようやく絞り出した脚本。
彼にとって確かな手応えを感じる『傑作』でした。
書きあがった晩に踊り狂う姿は
いかに彼がハイになっているかがわかります。

しかし映画会社の社長には『駄作』の烙印を押されます。
おまけにバートンは首輪をつけられた犬のように
社長にコキ使われる運命が待っている事を知ります。
おそらく『現実』はこの世界です。

そこで再び箱に戻ります。
バートンはその中身がわかっていたのかもしれません。
その箱に入っているものを見る事は『現実』を認める事に繋がり
彼はそれが恐ろしくて中身を確認する事も捨てる事もできない。

その箱を持って浜辺を歩くバートン。
美しい海と美しい女性。
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彼が泊まっていたホテルに飾られていた絵とまったく同じもの。
現実とは思えない幻想的なシーンでこの映画は幕を閉じます。

あれ?

もしかしたら…

全ては夢なの?

ここからは僕の妄想。

 浜辺で箱の中身を確認するバートン。
 箱の中身はなんとバートン本人の頭が入っていた。
 汗だくで目覚めたバートンは白紙の脚本に呆然とする。


なーんてちょっと陳腐かな?
ありきたりな『夢オチ』になってしまいますけど。。。
それにしても色々な想像を掻き立てる
印象的なラストシーンです。
『現し世は夢、夜の夢こそ真』という
江戸川乱歩の言葉を思い出しました。


本作は世界中の批評家たちから大絶賛されました。
(大ヒットとまではいかなかったようですが)
観る者によって様々な深読みが可能な作品。
興味がある方は是非!







[ 2014/03/29 14:06 ] サスペンス | TB(0) | CM(2)