『少年は残酷な弓を射る』 世界中の評論家から高い評価を得た傑作!圧倒的に残酷な物語

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『少年は残酷な弓を射る』
We Need to Talk About Kevin


監督  リン・ラムジー


2011年
イギリス
112分



ちょっと早いんですが、今年を振り返ってみて
一番繰り返して観た映画を紹介します。
『少年は残酷な弓を射る』です。
5~6回は観たような気がします。
しかも毎回レンタル(笑)買えよ!って話ですね。

イギリスの女性作家に贈られる
文学賞であるオレンジ賞を受賞した
ライオネル・シュライヴァーの小説を映画化。
これが本当に良くできた映画。
母の視点から息子を描くドラマなのですが
恐怖映画とは違う、怖さがあり
最後におとずれるショッキングな展開に圧倒され
同時に『親子』って何なのかを考えさせられます。


母の愛を拒絶する息子。彼はモンスターとなり母を追い詰める


あらすじ

世界を旅行する作家のエヴァは
自由を愛し、仕事にも誇りを持った女性。
旅先で知り合ったフランクリンと一夜をともにし
エヴァは妊娠してしまう。
今までの自由とキャリアをあきらめなければならないエヴァは
妊娠を心から喜んではいなかった。

生まれてきた息子ケヴィンは決して母に心を開かず
母に対して嫌がらせを繰り返し
時には精神的に追い詰めるような怪物に成長する。
やがて、美少年へと成長したケヴィンだったが
エヴァの全てを破壊してしまう恐ろしい事件を引き起こす。



凄い映画。
最後まで続く緊張感!
エヴァを演じるティルダ・スウィントン
これまでのキャリアで最高の演技!
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彼女は製作総指揮も担っています。

ケヴィンを演じるエズラ・ミラーの鬼気迫る怪演!
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圧倒的な存在感!怖い!

ここ最近観た映画の中でダントツの作品。
でもこの映画を『つまらない』という人が多くて(笑)
もう少しだけ深く掘り下げるだけで
本作に対する気持ちが変わると思うんです。

あらすじを読んでもらえばわかるように
息子が母を苦しめるだけの話と感じる人も多く
重苦しく救いのない物語に耐えられない人もいるでしょう。
しかしこの映画、それだけではないような気がします。



最後までエヴァの目線で語られる物語


エヴァは妊娠を喜んではいませんでした。
しかし父親のフランクリンは大喜び。
この時点で二人の間には見えないがあります。
大きくなるお腹にも愛情を持てず
生まれた時ですら心から喜べていません。
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エヴァが抱くとケヴィンは泣き止まず
フランクリンが抱くと泣き止む。
エヴァが機嫌をとろうとしても無視。
パパにはニコニコと抱きつきます。
これが非常に残酷な描写で繰り返されます。

このパパも問題ありで
ケヴィンを溺愛しているので
エヴァがどんなに悩んでいても
『男の子ってそういうものだから』
全く取り合ってくれません。
ケヴィンに疑いを向けるエヴァに
カウンセリング受けろとまで。
二人は離婚直前の状態になります。

ケヴィンは毎日のように嫌がらせを繰り返し
ノイローゼのエヴァを見て喜んでいるようにも見えます。
その嫌がらせは背筋が凍るほど憎悪に満ちています。

 これは歪んだ愛のカタチなのか?
 それとも感情のない悪魔のような存在なのか?


精神的に追い詰められていた矢先に
が生まれます。
これが天使のように可愛らしい子で
エヴァは母の喜びを初めて感じたと言ってもいいでしょう。
妹の存在はケヴィンにとっては驚異だったのかもしれません。
ケヴィンの行動はどんどんエスカレートしていきます。
そもそもエヴァが何をしたというのか?
息子に拒まれる原因なんて一つもありません。
唯一考えられるのが『望んでいた子ではなかった』という事実。
それでも必死に母親になろうとするエヴァですが
ケヴィンは絶対に心を開きません。
そしてどんどんエヴァは孤立していくのです。

 それは母を独占したいという欲望だったのか?
 それとも心から母を憎んでいたのか?


どちらであれケヴィンがモンスターであるという
事実は変わりませんが
エヴァの目線では語られる物語では
ケヴィンの気持ちや行動の意味がハッキリしません。
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この映画のテーマは『母親という生き方』


本作で一番感動的なのは
母である事を諦めないエヴァ。

どんなに追い詰められても
どんなに孤独になっても
どんなに恨まれても
彼女は母である事を諦めません。
この辺にこの映画の真のテーマがあるような気がします。

悪魔のような息子であろうが
食事を用意し、洗濯物を綺麗にたたみ
部屋を掃除している姿は
胸が締めつけられます。



愛を拒絶される母と悪魔のような息子
この二人には似ている部分もあります。

例えばこれ。

噛んだ爪を並べるケヴィンと、卵の殻を皿の隅に並べるエヴァ。
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無意識の行動に共通点があるのが面白い。

また子供が間違って開けないように鍵をしている戸棚と
ケヴィンが通販で買った自転車の鍵。
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不思議と似たものを欲しがっているのかもしれません。

また二人が車に乗った時の後ろ姿。
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どことなく似ている二人。
この二人が親子である事を印象づける上手い演出ですね。


徹底して映し出される『赤』


本作は『赤』を印象的に使っています。
トマト祭りから始まり
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自宅にぶちまけられたペンキ
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パンにベッタリ塗られたジャム
他にもあちこちに鮮やかな赤が見られ
それはまるでのようであり
ラストシーンでの惨劇を予告するかのよう。

そして本作で幾度となく映し出されるのが
エヴァがペンキだらけの家を掃除するシーン。
体中真っ赤になりながらも
必死にペンキを落としていきます。
そして真っ赤に染まった手を洗うシーンは
息子が犯す罪への贖罪にも見えます。

この『赤』を使った演出は本当に見事で
映画の緊張感を高める事に成功しています。


ラストシーンで二人が交わす言葉。
非常に曖昧なセリフなんですが
とても印象的なシーンです。
『母である事』
『母親という生き方』
の意味を
深く考えさせられる映画でした。
もし観る機会がありましたら、是非2回観てください。
絶対に2度目の方が面白い!






[ 2013/11/20 14:59 ] クライム | TB(1) | CM(2)

『ノーカントリー』 第一回!映画座談会!(基本的には飲み会)

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『ノーカントリー』
No Country for Old Men

監督 ジョエル・コーエン イーサン・コーエン

2007年
アメリカ
122分



第一回 映画座談会 コーエン兄弟の傑作『ノーカントリー』


『もっと映画な生活!』50本目の作品は『ノーカントリー』!

今日はちょっと趣向を変えまして
映画好きのメンバーに集まってもらい
お酒&晩御飯を食べながら
ワイワイと座談会を行いました。

『ノーカントリー』は、コーエン兄弟製作のスリラー映画。
アメリカとメキシコの国境地帯を舞台に
麻薬取引の大金を巡って追いつ追われつの逃亡劇が繰り広げられます。
公開直後から世界中で大絶賛された大傑作です。


参加メンバー

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 ニルコビチ

 当ブログの管理人。



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 ハーツ

 映画と酒を愛する男。仕事は音楽・映像関係。
 豊富な知識は酒を飲む事で崩壊する。


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 ポ コ

 映画はもちろん、漫画・小説・サブカルにも造詣が深く
 幼少期からスタローンを尊敬している変わり者。


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 ワズカ

 ニルコビチの嫁。レシピブログ『かてmemo』管理人。みんなの御飯担当。




全員そろったところでDVDを鑑賞。
観終わったところでもう一度再生しながら乾杯!
ワイワイと賑やかな座談会となりました。


ニルコ   コーエン兄弟の作品って観ている最中に『スゲェ!』って言うんじゃなく
観終わると同時にジワジワくる感じがあるよね。
ポ コそーだね。たしかに全部そんな感じ。面白いよね。
ハーツこの作品は何年前?
ニルコ公開が2007年。
ハーツあ、最近なんだ。
ニルコそうそう。アカデミー賞で4冠とった作品。
※作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞

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殺し屋アントン・シガー登場
ハーツそもそもこいつってなんで捕まったの?
ニルコ  荒野でボンベっぽいの持ってたからじゃない?
テキサスの荒野をホースがついたボンベ持ってたら怪しいよね(笑)
ポ コマズイなぁそれは(笑)顔もヤバイしね。
ニルコ出身地不明な顔ね(笑)
ハーツイタリア系かな?アングロサクソンではない感じ。
ニルコ何気に超アメリカンな格好してるよね。襟が長くて靴も尖ってるし。
これは彼なりの変装なのでは?っていう説もあって。
アメリカ人になりすます為にファッション誌で勉強したけど
テキサスでは流行ってなかったから逆に目立った感じ(笑)
ポ コあははは(笑)

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ニルコ  あとこの手錠を使って首を絞めるシーン。天井からのカメラがいいよね。
ポ コちょっと回ってる感じ?
ニルコそうそう。これ完全に顔芸だけどね(笑)

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ボンベ銃が炸裂!
ハーツ  血煙が飛んでるね!こだわるね~。
ニルコ斬新だよね。武器が。重そうだし。

ここでモス(ジョシュ・ブローリン)登場。
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ハーツこれ意味わかんない。この犬?※足を引きずる犬が映る
ニルコ   足を引きずっている犬を見つけて
歩いてきた逆方向に何かがあると感じたんじゃない?
アホそうな顔してるけど実は優秀(笑)
ベトナムに二回行っているとか言ってたし
動物的な勘で戦地を生き抜いてきたんじゃないかな。
ハーツあーなるほど。

死体が転がる現場を発見。
ヤクの取引で揉め事があった様子。
その中の一人はまだ息があり『水をくれ』と声をかけてくる。
大金が入ったカバンとピカピカの銃を手に入れる。

帰宅したものの、どうにも現場が気になり
夜中に水を持って再び現場へ。

ニルコ  これがねー。現場から金持って逃げちゃえばよかったのに。
ハーツあれってヤクを取りに行ったんじゃないの?
ニルコいや、違うでしょ。水を飲ませる為に行ったんだよ。
ポ コそうそう。お人好しな部分。
ハーツついでにヤクも頂いてって感じじゃないくて?
ニルコモスは金さえ手に入れば良かったんだけど
水を欲しがってた奴がどうにも気になって寝れないんだよ。
ベトナムでのトラウマみたいなのがあるんじゃないかな。
あの時に水を飲ませてやりたかった…みたいな。
戦争行った奴しかわからない部分じゃない?
ポ コ余計な事しなきゃ良かったのにね(笑)
ニルコ本当だよね(笑)
ただ金持って逃げるだけじゃなく
お人好しな部分があるから感情移入しやすいというか。
奥さん大好きっぽいし。
銃は欲しかっただけっぽいよね?
ハーツそりゃそうでしょ。ピカピカの銃って高かったりするから。
あと、ベトナム戦争とか行ってる奴は特にそうだけど
アメリカ人って45口径信者だから。
向かってくる人間を止められる銃なんだよね。
戦争での肉弾戦では貫通するタイプの銃よりは・・・
(内容がマニアックすぎるので省略)

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ここでワズカの晩御飯が完成。

ワズカ  『カリオストロの城のパスタ』です。

美味しそう!!!
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一同拍手!何故か撮影会が始まる。

↓詳しいレシピはこちら!↓
『かてmemo』カリオストロの城のミートボールパスタ


忘れちゃいけない! 主役=トミー・リー・ジョーンズ


ニルコ    おそらく保安官が主役なんだよね?
ポ コ主役はそうだよね。
ニルコDVDのジャケ見ると真ん中にコイツいるけど。
一 同あはははは(笑)
ポ コ原題が『No Country for Old Men』だし。
ニルコ老人が住める国は無いみたいな感じ。
最初から『俺に解決できる事件じゃねぇ』ってスタンスだもんね。
ポ コ小説で言う『何人称』みたいなのを結構上手く使ってるじゃん
ずっとモス視点でしょ。逃げてる人みたいな
逃げればいいなって思ってたらあっさりぶっ殺されて。
そこで一気に保安官目線に戻ってる。
ニルコあーそうか。
ポ コそこらへんがすごく面白いっていうか上手いよねー。
ニルコ実は物語は保安官目線でずーっと続いてるんだけど
『一方その頃』ってノリでモス目線の逃亡劇と、殺し屋目線があって。
ポ コただそれが凄く長いから(笑)保安官が脇役に感じちゃうっていうか。
ニルコ保安官を脇役として観ちゃうと、この映画の面白さが減っちゃう。
ポ コうんうん。『あ!そっか!保安官が追いかけてる映画だった』って気付く。
一 同あははは(笑)
ポ コ保安官は全然追いついてる感じしないから
ニルコ随所に鋭い推理を見せるけどね(笑)
でも『うーんわかんねぇな』で終わるし
一 同あはははは(笑)
ポ コこんな保安官の映画ってないよね。
もうやめるってずっと言ってる感じ。
ニルコそもそも現場でも馬に乗ったままで『うわ~ひでぇなぁ』とか(笑)
ハーツ現場を荒らしまくってね(笑)
ニルコ麻薬と金が絡んだ事件って動機みたいなのがほとんどないから
こういう理不尽な事件は老人には無理だって事なんだよね。

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ニルコ  この3人って劇中で一度も出会わないよね?
ポ コあーそうだね。保安官とシガーは会ってないし
ニルコモスとシガーもだよね。
ポ コいや銃撃戦があるでしょ。
ニルコあー。でも直接対面してはいないっていうか。
ポ コそっか。
ニルコお互い撃った弾があたっただけ(笑)腹とか足に。
あとは電話か。
ハーツうーん確かに。
ニルコ逃げるモス、追うシガー、なかなか追いつかない保安官。

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笑っちゃうほど強すぎる個性!殺し屋シガーの美学


ニルコシガーの体型もいいよね(笑)
ポ コだらしねぇ身体(笑)
ニルコ 全裸でトイレ。ギリギリ見えない感じ。
ポ コ気持ち悪いなー。

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ハーツシガーって余計な殺しはしたくない感じあるよね。
最低限ルールがあるっていうか。
ニルコ  最低限どころかルールでガッチガチなのかも。
ハーツがんじがらめになってるのか(笑)
ニルコ例えばどうしても車が必要だったらすぐに殺しちゃうけど
ガソリンスタンドではコインで相手に決めさせたり。
ワズカ最後の奥さんにコインを選ばせるシーンは?
あれって最後まで選ばかなったって事?
ニルコうーん。たぶん選ばなかったのかな。
結局殺したんだと思う。家を出る時に靴の裏を確認してたし。
ハーツあーそれは俺も思った。
ニルコ計画とは関係のないイレギュラーな場面では
相手にコインの表裏を選ばせて殺すかを決めていたのに
今回は選ばない相手を殺してしまったんだよね。
その帰り道に自動車で事故っちゃう。
ポ コジンクスみたいな感じね。
初めて観た時ここ巻戻して観たよ
あれ?赤信号だったのかな?って思ったら青信号で(笑)
普通に進んでるだけなのに事故ってるんだよね(笑)



セリフの少なさ、音楽の少なさについて


ニルコ  この映画ってセリフが少ないけど
まあ普段生きていて一人で行動してたら喋らないか。
ポ コあーそうだね。リアルっちゃリアル。音楽も無いし。
ハーツそうそう音楽がないってのが珍しいよね。
無いように思えて、実は音が鳴ってるっていう映画もあるけど。
ポ コ店でコインを投げるシーンでちょっとだけ音楽ありましたよ。
ハーツあ、マジで?
ポ コうん。音楽ってよりは『ふわぁ~』っとした音(笑)
ハーツちょっともう一回観てみようよ。
凄いね。洞察力。
ポ コあははは。


チャプターを戻し、お店のシーンを鑑賞中
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ポ コほらここ。
ハーツん?鳴ってるけど・・・
ポ コまあ曲っていうか効果音っぽい感じ。
ハーツあー鳴ってる鳴ってる。
ポ コヒリヒリしたシーンに合ってる(笑)
ハーツよく気づいたなぁー。
ポ コ音楽がない映画だからちょっと目立ったのかも。



印象に残ったシーンや気になった事


ワズカ  カラスを撃つシーンかな。あれはなんで撃ってるの?
単純に『鳥を見たら撃つ練習してます』って感じ?
一 同あはははは(笑)
ニルコなんなのかねー?確かによくわかんないなー。
俺はモスが泊まるホテルにシガーが追いつくシーン。
モスが危険を感じてホテルから脱出して
そのまま逃げるのかな?と思ったら
すぐにホテルに戻るでしょ?
一 同あぁー。
ハーツ確かに軍人っぽい動き。
ニルコそうそう!馬鹿みたいに逃げるんじゃなくて
まずは相手の動向を見るみたいな。
ハーツ発信機が仕掛けられてる事に気がついたのに
あえて捨てない。捨てないで待ち構える。
ニルコ発信機があろうが俺は軍人だから負けないって感じ?
ハーツうんうん。
ニルコモスがホテルに戻った時、まず猫を見るじゃん?
ポ コうんうん。
ニルコ餌がこぼれてるんだよね。
それから受付にいた男の姿がなくて
背後のドアが開いてる。
それを見て『そこに死んでる』って気付く。
この無駄のない動きがいいなーって。
ハーツでも二人の撃ち合いは余裕ない感じだよね(笑)
ニルコそうそう(笑)必死!
ポ コどっちも負傷するし(笑)
ハーツ気になったっていうか全然関係ないけど
殺し屋が『マンハッタン無宿』に出てくる凶悪犯に似てる(笑)
ニルコマンハッタン無宿?

ここで全員でyoutubeチェック。

※マンハッタン無宿とは?
イーストウッド主演のハードボイルド作品。
ダーティーハリーの原型と言われている。
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一 同 あああー!(笑)
ポ コ似てる似てる(笑)
ハーツだからなんだって感じだけど。


THE END



細かい演出が散りばめられていて
何度も観たくなる『ノーカントリー』
観るたびに気付く事がたくさんある
大変見ごたえのある作品です。
というわけで今回はここまで!
みなさんお疲れ様でした!








[ 2013/09/16 00:15 ] クライム | TB(0) | CM(4)

『ドライヴ』 クールに疾走するクライム・サスペンス!叶わぬ恋に泣け!

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『ドライヴ』
Drive

監督 ニコラス・ウィンディング・レフン

2011年
アメリカ
100分


上映直後からとにかく話題だった映画
『ドライヴ』をご紹介します。
この映画を観たばかりの頃は
『最近面白い映画あった?』と聞かれたら
『ドライヴ!』と即答していました(笑)




『ドライバー』と呼ばれる男には名前も過去も無い


ドライバー(ライアン・ゴズリング)
昼は自動車修理工場で黙々と働き
依頼があれば危険なカースタントの仕事もしています。
そして『逃がし屋』という危なっかしい仕事も。
逃がし屋とは強盗を逃がす専門の運転手。

『待つのは5分だけ』
『連絡は最初の1度だけ』
『銃は持たず運転だけ』


このルール範囲内の仕事であれば100%逃がしてやるという
プロフェッショナルな男です。
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彼の逃がし屋としての顔はオープニングで見る事ができます。
ハリウッド映画的ド派手なカーチェイスではなく
一気にトップスピードで走り出したと思ったら
暗闇の中に隠れ、息を潜めるという
忍者のようなドライヴテクニック!
これが妙にリアルで生々しいのです。
ギリギリの緊張感の中、警察の追跡を完璧に逃れ
人ごみに消えていくドライバー。
ゾクゾクします。

では簡単にあらすじを。

ドライバーは、隣の部屋に住む
子持ちの美女アイリーン(キャリー・マリガン)に惹かれます。
二人はドライブに出かけたりと休日を共に過ごすようになりますが
彼女には現在服役中でまもなく出所予定の旦那が。。。

ほどなくして夫のスタンダードが刑期を終え出所。
アイリーンは家族との生活が始まり
ドライバーの恋は終わ・・・ったかのように思われたのですが

ある日、ボコボコにされ血まみれで倒れているスタンダードを発見。
どうやらその夫、服役中に厄介な組織から借金をしており
『強盗をしろ』と追い詰められているのだとか。
ドライバーはアイリーンの夫を助ける為、逃がし屋となり
ギリギリのバランスで保たれていた人生が崩れていきます。
後日、強盗を決行するのですが
全ては組織の罠だと知り。。。


といったストーリーなのですが
非常にシンプルで『物語で魅せる』タイプの映画でありません。

淡々とした展開の中にエッジの効いた演出があったり
登場人物のちょっとした表情の変化が生々しかったりと
想像力を働かせて『行間を読む』タイプの作品です。

ちなみに彼の過去は一切語られません。
それどころか名前すらありません。
ただ劇中では『ドライバー』と呼ばれています。
自分の命に価値感じていないような仕事選び
感情の起伏を感じさせない表情
家族もなく何も語らない孤独なドライバー。
そのクールで謎めいた雰囲気は
なにか暗い過去があるのでは?と深読みさせます。
どこにでもいそうな冴えない青年が
完璧で超絶な運転技術を持っている不気味さ。
それが主人公を恐ろしい程に魅力的にしています。


2011年を代表する世界が絶賛した映画


監督はニコラス・ウィンディング・レフン
知る人ぞ知るといった監督でしたが
今作『ドライヴ』はあらゆる方面から大絶賛!
カンヌ国際映画祭・監督賞をはじめ
多数の賞を受賞!
この大ヒットきっかけに
過去の作品が相次いで劇場公開・ソフト化されました。
クールでバイオレンスな作風は
クエンティン・タランティーノあたりと比較されますが
デビュー当初から独特の世界感を構築していて
研ぎ澄まされた神経質なカメラワークや
光と影のコントラストを強調した映像美は
デヴィッド・リンチの影響も感じさせます。

主役のドライバーを演じるのはライアン・ゴズリング
現在32歳で、大注目されている俳優の一人です。
本作の演技は見事の一言!
この映画のおかげで彼の名前を覚えました(笑)
背中にサソリの刺繍が入ったジャケットに革手袋という
超個性的(?)なファッションの主人公です。

アイリーンを演じるのはキャリー・マリガン
アイルランド人の血を引いているのもあってか
どこか儚げで犯罪的に可愛いんですよねー。
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こんな女性が隣に住んでたら好きになるわ~と(笑)
彼女は本作で英国アカデミー賞の助演女優賞にノミネート。
最近ではディカプリオ主演の『華麗なるギャッツビー』
デイジー役を演じました。


男が行動で魅せる無償の愛 暴走するロマンス


この映画の魅力の一つは『ロマンス』です。
ドライバーの真っ直ぐな想い。
何故そこまで?と思うはず。
ほんの数回ドライブしただけなのに・・・。
自業自得でボコられた旦那なんてほっとけばいいのに
『アイリーンにも危険が及ぶかもしれない』
旦那を助けちゃうんです。
その行動で気付かされます。
彼にとってアイリーンはそれほど大きな存在だったのだと。

バランスを崩したドライバーは暴走していきます。
人を殺す事でさえ何の躊躇もありません。
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『全ては彼女を守る為』
この目的達成の為、クールに遂行される殺人の狂気!
そのリアリティあふれる残酷描写!

そしてこの映画の最大の見せ場と言っていいのが
『エレベーター』のシーンです。
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是非見て欲しいのでネタバレは書きませんが
超絶にロマンチックでバイオレンスな演出に腰を抜かしました。

ダーティーなヒーロー像


孤独でダーティーな主人公と言えば
タクシードライバーのトラヴィスが思い出されます。
トラヴィスは命をかけて戦ったベトナム戦争から帰還。
ところが帰ってきたアメリカは
麻薬と売春にまみれた腐れ切った国でした。
やがて彼はアイデンティティを見失い
社会への不満や孤独に追い詰められ
自分が生きる意味に飢えて狂人化していく自己中心的人物

しかし『ドライヴ』の主人公は決して狂ってはいません。
何かしら欠落した人間かもしれませんが
社会やアイデンティティには無関心であり
何事もクールに決断するブレない男です。
行動する事でしか表現方法を知らないという点では
自己中心的とも言えますが
何かに導かれるように突き進む
一直線に生きる姿は痛々しいほど。
彼にはトラヴィスには無い『ヒーロー像』を感じます。
それよりは西部劇の主役の方が近いかもしれません。

ドライバーは『一緒にいる事』ではなく
自分にしかできない方法で彼女を守ろうとします。
この切なさを是非感じ取っていただきたい!


■映画を盛り上げるサウンドトラックにも注目!
この映画の魅力を上げていくと

ライアン・ゴズリングの名演
無駄がなくスピード感溢れるカメラワーク
狂気に満ちたバイオレンス映像
切なすぎる恋


などなど注目すべき点が多々ありますが
忘れてはいけないのが
映画を盛り上げる劇中の音楽!
今作のサントラは超絶おすすめです!

Drive
Drive 【Soundtrack】

Night Call - Kavinsky & Lovefoxxx
Under Your Spell - Desire
A Real Hero - College Feat. Electric Youth
Oh My Love - Riziero Ortolani & Rina Ranieri
Tick of the Clock - Chromaticss
他 全19曲


どの曲も素晴らしく、頭から離れなれなくなります。
聴いているだけで夜の街をドライブしている気持ちになれる名盤!


ストーリーそのものは実にシンプルであり
凝りまくったプロットや
感動的な展開があるわけではないのですが
感覚へダイレクトに訴えかけてくる力強さがある作品です。

観終わる頃には
『何故この映画がここまで話題になったのか?』が理解できるはず。
男ウケする映画と思われがちですが
女性にも超おすすめの大名作です。
映画とサントラをセットでお楽しみください。










[ 2013/09/13 10:44 ] クライム | TB(0) | CM(0)

『バーバー』 髪型を変えるように少しだけ人生を変えたい

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『バーバー』
The Man Who Wasn't There

監督
ジョエル・コーエン

脚本
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン

2001年
アメリカ
116分


コーエン兄弟の傑作『バーバー』
1940年~50年代後期にかけてアメリカで製作された
フィルム・ノワールの影響を感じさせる白黒映画です。
原題『The Man Who Wasn't There』を直訳すると
『そこにいなかった男』

白黒映画といっても光と影のコントラストが強いわけではなく
淡いグラデーションが美しく、とても柔らかい映像です。
これはカラー用のフィルムで撮影したものを
あえてモノクロに変換した為に生まれた効果です。

本来カラーで表現できるものを犠牲にしているわけで
退屈な映像になってしまうという可能性があったと思うのですが
そのリスクを補うように構図が冴えまくりの
まるで絵画のような映画です。

劇場公開されたのはモノクロのヴァージョン。
現在はカラー版も存在します。
どちらも観たのですが、カラーも素晴らしく美しいので
できれば両方観て欲しい!

髪型を変えるように 少しだけ人生を変えたい


あらすじ

エドは、義理の兄が経営する床屋で働いていた。
妻ドリスは彼女の上司であるデイヴと不倫関係にあるようだった。
エドは床屋を訪れた胡散臭い男(オカマ)から
新時代のビジネスといった投資話を聞く。
初めはペテン師の戯言と思っていたが
『他の人生が待っているかも?』という気持ちが芽生え始める。
投資の資金は1万ドルを工面する為に
妻の不倫相手のデイヴを恐喝する事を思いつくが
その行動がきっかけで人生の歯車が狂っていく。


主人公エド・クレイン
ビリー・ボブ・ソーントンが演じています。
曲者な雰囲気とハードな存在感で
数々の話題作に出演しているベテラン。
本作の演技は最高で
何も喋らなくても映画が成り立ってしまう存在感は凄い!
まだ未見なのですが
インデペンデント映画『スリング・ブレイド』では
監督・脚本・主演を務め、アカデミー脚色賞を受賞してます。
この作品はレビューでの評価が高いので
観てみようと思っています。

エドの妻ドリスフランシス・マクドーマンド。
コーエン兄弟の作品ではお馴染みの女優さんです。
主演した『ファーゴ』が世界的に成功したことで
彼女はジョエル・コーエンの奥さんなんですね!
ミラ・ジョヴォヴィッチやヘレナ・ボナム=カーターみたいに
監督と結ばれる女優さんって多いんですね。
後半にかけての『表情だけで伝える』上手さ!
大女優だなぁと感心してしまいます。

レイチェル・“バーディ”・アバンダスを演じるのは
スカーレット・ヨハンソンです。
セクシーな女優と認知されている彼女ですが
『バーバー』は、素朴な少女だったヨハンソンが
大人を感じさせる女優として成長した姿が見れる貴重な作品。
特に後半にかけて難しい役を大胆に演じています。
当時15歳(!)なんですけど驚きの色っぽさです。

変化球で人間の愚かさを描くコーエン兄弟の上手さ


この映画を『面白くない』という人が少なからずいるようですが
たしかに面白みには欠ける作品ではあります(笑)
個人的には大好きな映画で
皮肉っぽい展開の中にユーモアを感じさせる
味わい深い映画だと思います。

この映画の主人公は
どこにでもいるような
くたびれたオッサン。凡人。

彼の熱のない眼差しは
人生に諦めのようなものを感じさせます。
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主人公であるエドの心の声がストーリーの語り部です。
感情は無く、ボソボソと語り続けます。
しかしエド本人はほとんどセリフがありません。
気難しそうに煙草を吸って(吸いすぎ!)
感情もなく仕事をこなし
自分以外の人間を軽蔑し
かといって争うのも柄じゃないので
日々、無関心を演じて生きています。

妻の不倫に気付いても無関心なエド。
完全に冷えた関係でしたが
胡散臭い儲け話をもってきた
ペテン師との出会いをきっかけに
妻の不倫相手のデイヴを恐喝する事を思いつくのですが
それは妻への復讐というよりは
ちょっとした『いたずら心』に近い行動でした。
ところが、それをきっかけに
彼の退屈な人生に大きな波が押し寄せ
それを避ける術を知らないエドは波に呑まれて行きます。
自分の行動に責任を感じているようにも見えますが
転落していく事に関心が無いようにも見えます。

それからバーディ(スカーレット・ヨハンソン)と出会い。
彼女が弾くベートーベンのピアノ・ソナタ『悲愴』
エドは心を奪われます。
今まで居場所の無かった人生に
小さな灯火を見つけたような感情が芽生えます。
やがて彼女の存在は、エドの心の拠り所になります。
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しかし『彼女に幸せになってもらいたい』という気持ちが
皮肉にも悲劇に拍車をかけてしまいます。
清楚でおしとやかに見えたバーディですが・・・
これがなかなかの曲者!
人は見かけによらないって事なのでしょうが
そこまでやるか!コーエン兄弟!

基本的に重たい映画ではありますが
時々入ってくるユーモアが笑いを誘います。
『未確認飛行物体』のエピソードって必要?って思いつつも
まんまとコーエン兄弟の罠にハマり笑ってしまいました。

金持ちばかりが得をする時代と根深い人種差別


客の髪を切って、髪の毛をゴミ箱に捨てる毎日。
エドはアメリカンドリームとは縁のない人物。
憧れているわけでもなく
むしろ嫌悪感を持っているように見えます。
たまに『他の人生があったのかも』と考えたりする程度。

それに比べて他の登場人物は
自信過剰な金持ち(決まってデブ)だったり
見栄っ張りで口ばっかりな人物が目立ちます。

例えばディナーの最中に
『日本兵は虫やら草の根っこやらを食っていた』
『ガリガリでニキビ面のアメリカ兵が日本兵に食われてた』

なんて品のない小話で大笑いするシーンがあったり
ドリスの従兄弟の結婚式に向かう途中
『イタリア人は大嫌い』と顔をしかめたり
人種差別丸出しのセリフがあります。

また裁判のシーンでは大げさな弁護士が登場し
陪審員のお涙を頂戴する大芝居をします。
とてもじゃないけど裁判とは言えない感じです。
簡単にねじ曲がる不条理な正義は
いかにも当時のアメリカ人といった感じ。
これらのシーンは
『どこにも属せない男』であるエドの孤独を強調して
魅力的に感じさせるエッセンスになっているような気がします。

エドはゲイなのでは?という説もあります。
たしかにそう感じさせるほど異性への興味を感じません。
妻の浮気にも無関心で
夫婦の関係は冷めきっているという事実や
女子高生からの色っぽい目線も拒絶したり。
でもゲイではないと思います。
エドにとってはセックスは厄介事なのでしょう。
興味がないわけじゃなく、面倒はごめんだという事。

あっさりとした幕切れと深い余韻 何度も見たくなる映画


ネタバレは避けたいので結末は書きませんが
とても急ぎ足で美しいラストシーンが訪れます。
実にあっさりとした皮肉な結末。
エドの言葉が走馬灯のように思い出され
不思議な余韻が残ります。

流れに身を任せるクラゲのような人生のエドですが
厄介事から逃れるような生き方をしていても
他人を不幸にしてしまう可能性がある
という事でしょうか。

『ちょっとしたきっかけで人生の歯車が狂っていく』
これこそコーエン兄弟の真骨頂です。








[ 2013/09/01 13:42 ] クライム | TB(0) | CM(0)