『ミリオンダラー・ホテル』 巨匠ヴィム・ヴェンダースの20作目!なんと原案はU2のボノ!世界からはじき出された者たちが集うホテルで起こった事件とは?美しくも切ない数日間を描く傑作!

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ミリオンダラー・ホテル
The Million Dollar Hotel



監督 ヴィム・ヴェンダース
脚本 ニコラス・クレイン
原作 ボノ


2000年
ドイツ
イギリス
アメリカ合衆国
122分



今回紹介する作品は
『パリ、テキサス』『ベルリン天使の詩』の
巨匠ヴィム・ヴェンダースの記念すべき20作目
『ミリオンダラー・ホテル』です。
実はこの作品、ずーっと観たかったのですが
なかなかレンタルショップにも中古ショップにも置いてなく
新品を買うにも廃盤やらなにやらで手に入らず。
まあ結局中古で買うことができたのですが
上映から16年も経ってしまいました(笑)
正直、あの頃どうしてそんなに観たかったのかも忘れましたが
とにかくようやく手に入ったわけですから
気合入れて鑑賞といきます!



夢の中を生きる奇妙な人々が暮らす古びたホテルで起こった殺人。そして小さな恋。


ロサンゼルスのダウンタウン。
古びた安宿『ミリオンダラー・ホテル』には
世捨て人のような奇妙な人間が長期滞在している。
その中のひとり、トムトムは知的障害を持つ心優しい青年。
『ホテルの執事』と住人たちに慕われていたが
結局は使いっぱしりなのであった。
トムトムはエロイーズという住人に恋心を寄せていた。
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ある日、トムトムの親友イジーが屋上から転落死する。
イジーの父は『自殺のはずがない。他殺だ』と信じ
FBI捜査官スキナーをホテルに送り込む。
半ば強引な方法で捜査をすすめるスキナーに
住人たちは困惑し、平和だったホテルは
たちまち混沌としてくる。

やがて、トムトムはエロイーズと心を通わせあうのだが
ずる賢い住人たちの手でイジー殺しの犯人に仕立てられ
警察に追われる身となり・・・




いやー。。。
観れてよかったー。。。

これは大傑作でもなければ
歴史に名を刻む作品でもない
ただ通り過ぎていくような作品です。
しかしこの作品には人の心に残る『なにか』があります。

みなさんはあらゆる映画を
『好き』『嫌い』に分ける事ができると思うのですが
ヴィム・ヴェンダースの作品になると
これらに『わからない』というのがプラスされます(笑)

・雰囲気は好きなのに意味がわからない
・監督が何を意図しているのかがわからない
・っつーか面白いのか面白くないのかすらわからない


つまり一般的な映画に比べるとやや芸術作品よりなので
難解であると評価されがちな作品が多いのです。

しかしこの『ミリオンダラー・ホテル』
ヴィム・ヴェンダース作品の中では
格段にポップであり、わかりやすい作品です。

その要因としまして
『ミステリー』であるという事が挙げられます。

 とあるホテルで起こった事件。
 自殺として扱われる寸前に出てきた他殺説。
 犯人は必ずこの中にいる。


これだけわかりやすいミステリー要素ってのはないですよね。
軸になっているのが『犯人探し』であり
それにプラスされているのが
トムトム目線で語られる『エロイーズへの恋心』です。
これだけベタなテーマを取り扱うなんて
ヴィム・ヴェンダース作品では珍しいことです。
まあゴリゴリのファンにしてみると
『物足りない』意見もあるようですが・・・



さて話を戻して本作について。
まずは主要人物を何人か紹介。


本作のストーリー・テラー
トム・トムです。
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演じるのはジェレミー・デイビス。
髪型がすげーカワイイですね。似合ってる。
この物語の核となる人物。


彼が恋心を寄せる相手、エロイーズ
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ミラ・ジョヴォヴィッチが演じています。
まー・・・とにかく可愛らしい!
この無造作な髪が素敵なのですが
撮影前に自分でジョキジョキ切ったのだとか。


FBI捜査官をスキナーを演じるのはメル・ギブソン!
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まさかのビッグネーム!
アメリカが舞台であることを思い出させてくれます。


これらの登場人物の他に
自称元女優の女や
自称ビートルズの5人目のメンバーだとか
インディアンやら
胡散臭い業界関係者などなど
社会のどこにも属せない
過去や夢や妄想から逃れられない
いかにも友達がいなそうな人々が集う場所。
それがミリオンダラー・ホテルです。
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『犯人は誰?』ではなく『物語はどこを目指しているのか?』


この物語は屋上からの飛び降り自殺をきっかけに始まります。
自殺したのは、やはりホテルの住人のイジー。(ティム・ロス!)
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トム・トムの親友でした。
イジーはユダヤ人なのですが
彼の父親は、息子の事件が世間に知られることを恐れます。
なぜなら、ユダヤ教は自殺を禁じているから。

そこそこ地位のある父親にしてみるとなんとも頭の痛い話。
『殺人事件に違いない!』と主張する父親ですが
『どうにか殺人事件として片付けてくれ』という思いが見えます。

スキナー刑事はホテルの住人全てに事情聴取を行い
間違いなくこのホテルに犯人が存在する事を確信します。

さて、このまま犯人探しになるのかと思いきや
この映画はレールを外れていきます。

一癖も二癖もある住人たちは
イジーの死を利用してなんと一儲けしようと企むのです。
違う住人が描いた絵を『イジーの遺作』として画商に売りつけ
見事に騙そうという魂胆。これがまたうまくいっちゃう。

またトム・トムが思いを寄せる女性エロイーズですが
実は精神病院にいた過去があり、現在は娼婦なのです。
そんな彼女を住人たちは冷ややかに扱っているのですが
トム・トムは恋をしているのです。それも真っ直ぐな。
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ほんの少しでも話をしたい。
仲良くなりたい。
彼女に触れてみたい。

トム・トムの純粋な想いはこの作品の重要なファクター。
直向きに生きる彼は人々を明るい気持ちにするのですが
その純粋さのせいで人々に利用されてしまいます。
最終的には『殺人犯』に仕立て上げられる始末。

ホテルの住人たちは疑われる事に疲れ
誰が犯人だろうがどうでもいいという
雰囲気になっていくのですが
面倒臭がった結果、トム・トムの純粋な心を利用し
犯人にしてしまおう、そしてこの話を終わらせようと
心無い行動に出るのです。
人間の本性の恐ろしさ。

でもトム・トムにとってはそんな事は些細な問題であり
エロイーズとのささやかなひと時こそが人生のハイライトであると
今を最高に幸せだと感じています。
残酷な展開。ここら辺が観ていて辛いところ。泣ける。
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心に突き刺さるラストシーン。『悲しみ』ではなく『痛み』


今まで色々な作品を観てきましたが
全ての映画に共通して好きなシーンというのが
夜明けの映像です。
朝日が昇る前の澄んだ空気
淡いブルーの世界
徐々に明るく照らされていく風景を見ると
その土地の夜明けを擬似体験したような気分になります。

舞台はロサンゼルスの古びたホテルなのですが
ヴィム・ヴェンダースの目に映るアメリカは
まるでアメリカじゃないみたいに見えます。
音楽を担当しているボノのサウンドもどこか空虚で
ここがどこなのかがマヒしてしまう効果がありますね。
(ボノは本作にカメオ出演しています!ヒントは『飲み物』)

本作でいうとオープニングとラストシーン。
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美しい青の朝、大げさな名前のホテルの看板
迷いのない青年の走る姿がスローモーションで映し出されます。

ため息が出るほど美しい映像と音楽が調和する神秘的なシーンです。
ここではないどこかに連れて行ってくれるのが
映画の醍醐味だとすると
ヴィム・ヴェンダースはいつだって期待に応えてくれます。

極力ネタバレなしで書きましたが(結構書いちゃってるか)
本作に対する考察は避けようと思います。
『感じる』事が大切な作品のような気がしますので。
他人の意見に左右されずに見て欲しいです。

ミリオンダラー・ホテルは悲しい物語ではなく
『残酷』で『痛み』のある作品。
観たという人と『どう思った?』と話したくなる感じ。

ブルーレイで欲しいんだけどなぁ。。。









[ 2016/10/01 20:37 ] ドラマ | TB(0) | CM(0)

『青いパパイヤの香り』 夏に観たい映画!ベトナムへの愛が溢れるトラン・アン・ユン監督のデビュー作!

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『青いパパイヤの香り』
the Scent of Green Papaya

監督 トラン・アン・ユン

1993年
ベトナム・フランス
104分



『青いパパイヤの香り』を紹介します。
トラン・アン・ユン監督『シクロ』でヴェネツィア国際映画祭のグランプリ受賞。
村上春樹のベストセラー小説を映画化した『ノルウェイの森』でも話題に。
ちなみに本作はトラン・アン・ユン監督のデビュー作です。
カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)
セザール賞新人監督賞を受賞
アカデミー外国語映画賞にもノミネートされました。



言葉は少なく、ひたむきに生きるムイの姿が可愛い!


サイゴンの資産家の家に
10歳の少女ムイが奉公人として雇われて来た。
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裕福そうに見える家庭だったが
仕事もせず家出する癖がある父と
家計を支え布地屋を営む母
家に寄り付かない長男
家庭環境に苛立つ次男
可愛げのない三男
毎日お祈りばかりしている祖母といった
問題の多い家庭なのであった。

長年この家に仕えている年寄りの女中は
ムイに朝食の用意を始めることを教える。
何事も真面目に取り組むムイは
料理、掃除を手際よくこなしていくのであった。
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ある晩、長男の友人クェンが一家を訪れ
ムイは彼にひそかなあこがれを抱く。

やがて10年。

ムイは新進作曲家で長年憧れていたクェンの家に雇われる事に。
彼もいつしかムイの素朴な魅力に惹かれていく。



なんとも不思議な映画です。
とてもセリフが少ない作品です。
特に大人になったムイはほとんど喋りません。
これといって物語に波がなく
ベトナムの魅力を伝える映像とともに
静かにゆったりと時間は過ぎていきます。
ほのかに中毒性もありつつ。
東洋人にしか出せない美しさ
ミステリアスな雰囲気が魅力的。
トラン・アン・ユン監督のベトナムへのを感じる
アートな作品です。

性的な描写が全くないにも関わらずエロティックな作品


まあなんといっても幼いムイを演じるリュ・マン・サンの存在感!
彼女の可愛らしさがこの映画をグイグイ引っ張ってくれます。
出来上がった料理を真剣な顔で運ぶムイがとても健気。
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手際よく働く女性ってなんというか
それだけで絵になるというか美しく見えますね。


この映画、奉公人としてやってきた少女の
シンデレラストーリーのようにも見えますが
どうやらもっと深いところに魅力がありそう。

この映画はものすごく『エロティック』な作品。
といっても性的な描写は一切ありません。
何かを連想させる描写があちこちに散りばめられています。

タイトルにもなっている青いパパイヤ
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幼いムイはその実に魅せられ
もぎ取られた茎から流れ出す白い樹液を眺めます。
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たぶん変態なんでしょうね。この監督。好感が持てます。
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っていうかこの触り方がもうエロい。


また小さな生き物への好奇心
ご飯を食べながら何を見ているのかと思ったら
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砂糖を運ぶアリ。

庭で見つけたカエル。
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小さな生き物を愛する姿は
幼いながらも母性を感じさせます。


やがて大人になったムイ(トラン・ヌー・イエン=ケー)
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なんか・・・突然いい女になりました。
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ってかまだアリ見てますけど・・・

汗ばんだ体を濡れ布巾で拭くシーン。
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もうこうなってくると裸よりエロい。

そうそうこの映画
とっても湿気が多いというか
湿度の高さを感じさせる作品でもあります。


ちなみにトラン・ヌー・イエン=ケーは監督の奥さんです。
『青いパパイヤの香り』に出演後、監督と結婚したのだとか。
その後も同監督の映画には必ず出演しています。



青いパパイヤってどんな味?魅惑のベトナム料理!



奉公人としてやってきた次の日の朝
早速教えられたのは朝食の準備です。
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まーこのベテラン女中の手際の良さ!
1分かからず1品炒め物を作っちゃいます。
しかも美味そう!

大人になったムイ。
もはやプロ級の腕前!
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なにこれ!美味そう!

朝はちゃんとパン。
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お腹すいてきた…。

もちろん青パパイヤも登場。
皮をむいた青パパイヤを包丁でザクザクと縦に切れ目を入れ
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それを削ぐように包丁を動かすと細い千切りに!見事!
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甘辛いっぽいソースをかけて…これはサラダですね。

嫁のブログでこのレシピの再現に挑戦しておりますので
こちらもどうかチェックをお願いします。
『かてmemo』
映画「青いパパイヤの香り」
青パパイヤのサラダ(ゴイ・ドゥー・ドゥー)



トラン・アン・ユンの芸術的センスの光る
美しい映像と優しい音楽。
ベトナムののんびりした時間の流れを感じさせます。
一人の女性の成長を描いたちょっと幸せな気持ちになれる作品。
夏に観たくなる映画です。








[ 2014/06/22 11:59 ] ドラマ | TB(0) | CM(4)

『歌え!ロレッタ愛のために』 魅力あふれるカントリーミュージックを堪能できる人間ドラマ シシー・スペイクスの熱唱に拍手!

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歌え!ロレッタ愛のために
Coal Miner's Daughter

監督 マイケル・アプテッド


1980年
アメリカ
125分




本日紹介する映画は『歌え!ロレッタ愛のために』です。
実在するカントリー歌手ロレッタ・リンの生涯を描く伝記映画。

ロレッタ・リンはこれまでに160曲、アルバム60枚を発表している
カントリー界の女王と言っていいスーパースター。
カントリー界で最も多く受賞した女性歌手です。
そのロレッタを演じるのはシシー・スペイクス!
彼女を支える旦那を若き日のトミー・リー・ジョーンズが演じます。
凄い邦題がついていますが、原題は『Coal Miner's Daughter』
炭鉱夫の娘という意味で、これは彼女の代表曲のタイトルです。
さてどんな映画なのでしょうか?


『君の歌が好きなんだ』その言葉を信じて彼女はステージに立った


ケンタッキー州のブッチャー・ホーラーにやってきた青年ドゥーは
貧しい炭鉱夫の娘、ロレッタに結婚を申し込む。
ろくに恋も知らぬ娘への突然の求婚に両親は大慌て。
ロレッタはまだ13才だったのである。
しかし互いに惹かれあう二人は両親の反対を押し切り結婚。
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ドゥーは炭鉱の仕事を嫌った為、二人は村を出たが
結婚指輪さえ買えない貧乏暮らしであった。
ロレッタは18才になる頃には4人の子持ちになっていた。
結婚記念日に指輪をねだってみたが
ドゥーが買ってきたのは、なぜか中古のギターだった。
ロレッタに歌の才能がある事を確信していたのである。
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やがてロレッタの歌は評判を呼び
カントリー界の女王パッツィ・クラインと組んでツアーを行うまでになる。
彼女の成功を影で支えてきたドゥーだったが
ロレッタの成功とともに居場所が失われていくのだった。
二人の心は離れていく。

カントリー界の頂点に立つロレッタは
過酷なツアーに神経をすり減らし
あれほど好きだったカントリーを歌えなくなってしまう。
彼女が絶望した時、手を差し伸べたのは優しい夫ドゥーだった。





シシー・スペイセク凄すぎ!!!
彼女の才能が爆発!

第53回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したのも納得!
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とにもかくにもシシーの歌声!
吹き替えなしで彼女が熱唱しているのですが
何とも言えないキュートでスモーキーな歌声!
絶妙なかすれ具合がとっても魅力的です。
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日本ではあまり馴染みのないカントリーですが
この映画を観るとその優しくて素朴な歌は
心にジワーっと染み渡ります。
ギターを持ってマイクの前に立つシシーの可愛らしいこと!
決して美人とはいえない女優さんですが
彼女には魔法のようなオーラがあって
キャリーでもそうでしたが圧倒的な存在感があるんです。
そして観る者を味方につける優しげな微笑み!
不思議な魅力を持った女優さんですね。
当時31歳だったシシーは13歳の少女を演じています!
これが不思議と違和感がない!
童顔?いややっぱ老け顔?いや年齢不詳!


夫役のトミー・リー・ジョーンズも素晴らしい!
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軍隊帰りの不良青年からオッサンになるまでをナチュラルに演じてます。
軍隊から田舎町にやってきて調子に乗った若造が
幼いロレッタに出会い、運命に導かれるように求婚し
あっという間に両親から彼女を奪っていく勢い!
ロレッタとはたくさん喧嘩をしますが
信頼できるパートナーである事が伝わります。
二人の愛はこれで終わってしまうのか?と感じさせるシーンがありますが
その後ロレッタが精神的に参ってしまった時に
優しく手を差し伸べるのはドゥー。
夫婦の絆って凄いなーと感動しました。
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ラジオに出演するロレッタと、それをカーステレオで聞くドゥー。
この嬉しそうな顔!


またロレッタのお父さんもいいんですよねー!
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13歳の娘に、可愛らしいドレスをプレゼントする父。
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これから大人になっていく娘の為に買ってあげたのでしょう。
娘の成長を心から喜んでいるのが伝わる印象的なシーンです。
そんな娘が、どこの馬の骨ともわからぬ若造にひっかかり
あっという間に恋仲になってしまうんです。
どれだけショックだったのでしょう。。。
ドゥーは勢い任せに求婚し、ロレッタの両親に許しを請います。
当然猛反対する両親ですが、可愛い娘の初恋相手です。
『反対しても結婚する気だろ?』と寂しそうに結婚を認めます。
父が結婚の条件としてドゥーに二つの約束をさせます。
『娘に手を上げないこと』
『遠くに行かない事』

もうどれだけ娘を愛してるの!
結局ロレッタはケンタッキーを出て行く事になるのですが
その時もさみしげな顔をするだけでロレッタを旅立たせます。
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父の優しさは偉大。


ロレッタの才能を見出し、ツアーに誘う
パッツィ・クラインを演じるのはビヴァリー・ダンジェロ。
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歌手としての一面もある彼女らしい素敵な歌声です。
ロレッタの良き理解者であり姉のような存在のビヴァリー。
彼女と過ごす日々の中でロレッタは歌手として大きく成長します。


ささやかな幸せを背景に夫婦の成長を描く物語


伝記映画というのは
いかにドラマチックな人生だったか?を描く
やや大げさな作品が多いような気がしますが
『歌え!ロレッタ愛のために』はちょっと違います。

初めて作ったパイは砂糖と塩を間違えてしまったという
漫画のようなエピソードから始まる二人の恋。
13歳で結婚した娘は料理も掃除もろくにできません。
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食った瞬間、危険を感じ嘔吐!

匂いを嗅いで、危険を感じ
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外に捨てる!ひでぇ・・・

ですが子供が生まれるときちんと母親らしくなってるんです。
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料理も美味しそう!
こういう当たり前のような成長が
緩やかな時間の流れを感じさせてくれます。

世界中の夫婦にありがちな些細な喧嘩や
子供達との楽しげな日々
のどかな田舎町の風景の中
ささやかな喜びに満ちた映像はホッコリした気持ちにさせます。

ゴージャスなラブソングではなく
どこにでもあるような日常を切り取って歌うカントリー。
この映画はまさにカントリーミュージックそのもの。
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やがてロレッタは歌う喜びを感じるようになり
名声と引き換えに家族と距離が離れてしまうのですが
夫と子供達、そして美しい田舎の風景がロレッタを励まします。


アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネートされた本作。
大げさなドラマではないけれど
心に響く優しい物語がそこにはあります。










[ 2014/03/26 12:16 ] ドラマ | TB(0) | CM(0)

『スモーク』 映画通が大推薦する名作!粋な大人は嘘と上手に付き合う?

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『スモーク』
Smoke


監督 ウェイン・ワン
脚本 ポール・オースター

1995年
アメリカ・ドイツ・日本(合作映画)
113分



クリスマスが近づくと観たくなる映画
『スモーク』を紹介します。

この映画が本当に大好きで
なんとなく再生してしまいます。

本作はアメリカ、日本、ドイツ合作映画。
原作『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』を書き下ろした
アメリカの人気作家、ポール・オースター
本作で脚本を書いています。
ブルックリンにあるタバコ屋が舞台で
何が始まるわけでもなく(まあ多少はありますが)
タバコを買いに集まってくるある連中(曲者揃い)との交流や
ちょっぴり切ない話がのんびりと描かれる
映画通に愛される作品です。

第45回ベルリン国際映画祭審査員特別賞受賞作品。


ブルックリンにある煙草屋の日常。ほろ苦い大人の映画


あらすじ

ブルックリンの街角で小さな煙草屋を営むオーギー。
彼には変わった趣味があった。
それは毎日同じ時刻の同じ場所で
写真を撮影するというものだった。
彼は14年間もこれを続けている。
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煙草屋の常連ポールは作家であるが
数年前に銀行強盗の流れ弾で妻を亡くして以来
仕事が手につかず悩んでいた。
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ある日、ポールが不注意で
自動車に轢かれそうになったところを
ラシードという一人の少年が救った。
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感謝したポールは彼を自分の家に泊めるのだが
ラシードの本名はトーマスであり
理由があり偽名を使って各地を転々としていた。

ブルックリンにある小さな煙草屋を中心に
男の友情、過去の恋人との再会
ある父と息子の再会といった
決して大きな事件ではないエピソードが重なり合い
心に小さな幸せが広がる。
一本のタバコがもたらす安らぎのように。



何度観てもいいなぁ。
なんなんですかね?この映画の良さ。
哀愁、小さな幸せ、心があたたまる友情。
とても味わい深い大人のドラマです。
前々からレビューを書こうと決めていた作品ですが
この不思議な魅力をなかなか文章にするのは難しく
何度か挫折してます(笑)

オギーの店が拠点となりつつも
その客であるポール
ポールと出会った少年ラシード
ラシードが探していたサイラス
軸になる人物がどんどん変わっていくのですが
この一連の流れが本当に見事で
これらのエピソードが見事に絡み合って
一つの映画になっています。
しかもどれもいい話。
大事件じゃなくて、少し切ない話。
ちなみに脚本の中の細かい台詞は
出演者たちによって即興的に書かれたのだとか。
それが絶妙な間となってリアリティがあります。
ちょっとした会話が気持ちいい!

ハーヴェイ・カイテルの代表作!男の哀愁を感じる最高傑作



とにもかくにも
本作のハーヴェイ・カイテルの存在感!
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デ・ニーロと同じくらいのキャリアがあるのに
なかなか大きな作品に恵まれなかったハーヴェイ。
タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』
一気に知名度があがり
いぶし銀の演技で数々の名作に出演しました。
本作は彼の代表作といっていいでしょう。
この映画を観て大ファンになった人も多いのでは?

ウィリアム・ハート演じるポールは小説家。
煙草屋の常連客なのですが
数年前に妻を銀行強盗の流れ弾で失っています。
それ以来スランプなのですが
少年との出会い、オギーとの友情が
彼を少しだけ変えていきます。
原作者ポール・オースターの分身なのでしょうか?
詳しくはわかりませんが
そうだったらいいなーと思いながら観ています。

大人になるという事 = 嘘と上手に付き合う事


この映画の一つのポイントになる要素が
『嘘』です。
そう書くとちょっと悪いイメージがありますが
この映画でいうところの嘘は
真実を少しぼやかすような嘘です。

誰にも言えない秘密を抱えている為
とっさに偽名を使ってしまうラシード
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本当は誰の子かわからないのに
『あなたの娘よ』というルビー
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彼らはマジメに語りますが
どこか曖昧な部分もあります。
しかし本作の登場人物たちは
その『嘘』と上手に付き合っています。
それは彼らにとって『真実であるか?』
それほど重要な問題ではなく
困っている時に頼ってくれる事や
悩みを打ち明けてくれる事のほうが重要なのでしょう。

それぞれ痛みを知っている人間だからこそ
人に言いたくない事を言わせるような野暮な事は無し。
他人との距離の取り方が絶妙で
観ていて本当に気持ちがいい!
自分もこのタバコ屋の常連になって
オギーに相談できたらなぁ(笑)

本作のクライマックスはやはりラストシーン。
クリスマスのエピソードを語るオギー。
嘘か本当かはハッキリしませんが
なんとも不思議な思い出話が聞けます。
トム・ウェイツの大名曲
『Innocent When You Dream』が流れ
モノクロの映像で繰り広げられる
オギーのエピソードは必見。

クリスマスにピッタリの映画だと思いますので
まだ観ていない方は是非。
DVDを持っていない方はこれを機会に買ってみては?
プレゼントにも最高の一本だと思います!



ちなみに本作の続編『ブルー・イン・ザ・フェイス』
『スモーク』を観た方へのご褒美というべき作品!
ブルー・イン・ザ・フェイス [DVD]
これも併せて鑑賞されると、より『スモーク』を満喫できます。
ずーっとDVD化されるのを待っていた作品で
最近ようやく発売されました。よかったー。
ルー・リード
ジム・ジャームッシュ
マドンナ
マイケル・J・フォックス

超豪華なゲスト達が、オギーの煙草屋に訪れます!
こちらも是非!










[ 2013/11/28 21:14 ] ドラマ | TB(0) | CM(8)

『BIUTIFUL(ビューティフル)』 突然宣告された『余命2ヶ月』 限られた時間の中、家族に何を残せるのか?

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『BIUTIFUL』
ビューティフル



監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

2010年
メキシコ
148分



前々から気になっていた作品をようやく鑑賞しました。
メキシコ映画『BIUTIFUL ビューティフル』を紹介します。

監督はアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
『アモーレス・ペロス』『21グラム』『バベル』といった
複雑な時間軸の中で展開されながらも
絡まった糸をたぐり寄せるように
物語がすすむにつれて全貌が明らかになるという
一筋縄ではいかない作品がファンに支持されています。

ところが本作『BIUTIFUL ビューティフル』
一人の男性をカメラが追い続けるド直球な作品。
ちなみにPG12指定です。

カンヌ国際映画祭  主演男優賞受賞
アカデミー賞    主演男優賞/外国語映画賞ノミネート
英国アカデミー賞  主演男優賞/外国語映画賞ノミネート
ゴールデングローブ賞 外国語映画賞ノミネート

医師から宣告された『余命2ヶ月』 残された時間で何ができるか


あらすじ

ウスバルは幼い姉弟を育てながら
アフリカや中国からの貧しい移民たちに
非合法の仕事の斡旋をしている。
移民には不法滞在の者が多く
警察に目をつけられているが
ウスバルは儲けから賄賂を渡すなどして
彼らを警察から守っていた。
ある日、医者からガンの宣告を受ける。
余命2ヵ月。
家族のため、仕事の世話をしている人たちのために
何かしてやれることはないかと必死に行動するが
現実は厳しく何事も上手くいかない。
体力は徐々に落ちていく・・・




素晴らしい。
観終わった直後は、あまりに救いのない物語に絶句。
なのに心に残る淡い余韻。
それが気になって次の日にもう一度観たのですが
一つ一つのシーンに重みが増して何度かが…。
忘れられない映画となりました。
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ウスバル役のハビエル・バルデムが素晴らしすぎる!
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彼と言ったらコーエン兄弟の『ノーカントリー』
殺し屋アントン・シガー!
只者じゃないとは思っていましたが
本作での彼の演技は鬼気迫るものでした。
突然宣告された『余命2ヶ月』を背負い
この世に残していく人々に何ができるか?を考えながらも
迫り来る人生の終わりに怯える姿。
そして子供たちへの愛。
本作の彼の演技を世界中のメディア、評論家が絶賛。
ショーン・ペンジュリア・ロバーツも賞賛しました。
特にショーン・ペンは映画を観終わった後
15分間も席を立てなかったとか。


別居中の妻マランブラを演じる
マリセル・アルバレスの演技も凄かった。
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アル中で薬物にも手を出し
躁鬱を繰り返す双極性障害で育児ができず
離れて暮らしていますが、これが本当に酷い。
『平気で嘘をつく』
『男遊びをやめられない』
『子供に手を上げる』

彼女は病気と向き合わない為
病状が改善することもなく
関わる人を傷だらけにしておきながら
自分が一番可哀想だと嘆くという最悪の状態。
ウスバルは自分の死後、彼女に子供を託す事を願いますが
何も改善していない彼女に絶望します。

そして驚かされるのが一般人の起用。
本作で重要な役割を担う
娘のアナ、子供の世話を頼むイへ
そしてイへの旦那のエクゥメは現地に住む素人!
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素人を使うのがイニャリトゥ監督の主義なのかもしれませんが
とんでもなく素晴らしい存在感。


ウスバルが残したもの


バルセロナは華やかな観光地といったイメージがありますが
本作で描かれているバルセロナは
その華やかさとはかけ離れた
薄汚れたスラム街です。
街には不法滞在の外国人が溢れ
彼らは違法な商品を露天で売り、麻薬にも関与しています。
ウスバル本人もバルセロナでは差別されている対象であり
安い賃金で働く移民たちの稼ぎをピンはねして
警察には賄賂を渡す事で生計を立てています。
こういったバックグラウンドを感じ取る事が大切。
これを無視しては映画の意味が変わってしまいます。

そんなウスバルが医師から『余命2ヵ月』と宣告され
限られた時間の中、二人の子供たちに何かを遺してあげたいと
自分の死に怯えながらも必死に生きる姿を描く作品です。

しかし先程も書きましたが
バルセロナの闇で暮らす人間にとっては
生きていくのがやっと。
せめて少しでも金をと必死に働きますが
体はどんどん言う事を聞かなくなります。
また、犯罪に手を染め、頼れる者がいないウスバルが
少しでも善意をもって生きていこうと考えたところで
邪魔をする人間があらわれ、何一つ上手くいきません。

この映画のタイトル『BIUTIFUL』
ビューティフルのスペル間違い。

娘が父にビューティフルのスペルを聞きます。
すると父は『発音の通りだ B…I…U…T…』
間違ったスペルを教えてしまいます。
BIUTIFUL04.jpg
この事からウスバルが
まともな教育を受けていない事がわかります。
そのような父親が残り60日ほどで
子供たちにしてやれる事は少ないでしょう。
しかし生きている間、もがき苦しみながら
思い通りにならない人生に絶望しつつも
生きる事に執着し、最後まで苦悩し続けます。
死に際まで『何ができるのか?』を考え続ける姿は
胸が潰れるほど切ないです。


本当はもっと色々書きたいのですが。。。
本作はなるべくネタバレなしで。


この映画を観た人に是非聞いてみたいのが
『ウスバルは子供たちに何を残せたのか?』
BIUTIFUL03.jpg
きっとそれぞれ違う意見や感想があるでしょう。
この映画は絶望だけを描いているわけではありません。
非常に重たい作品ですが、機会があったら是非。





[ 2013/11/24 11:26 ] ドラマ | TB(0) | CM(0)