『ひなぎく』 女の子映画の決定版!自由への暴走!カワイイは正義か?チェコ・ヌーヴェルヴァーグの代表作

eiga112.gif
『ひなぎく』
Daisies
Sedmikra'sky



監督 ヴェラ・ヒティロヴァ

1966年
チェコスロヴァキア
75分



今回紹介する作品は『ひなぎく』です。
ミニシアターで上映していたので観に行ってきました。
この作品は1966年製作のチェコ映画なのですが
暴力的なほどカラフルなビジュアルと
支離滅裂なストーリーもあってか
一部ではカルト的な人気があります。
カワイイ映像、ファッション、メイクは今見ても新鮮で
伝説の女の子映画と呼ばれている作品です。
コメントを寄せているのが小泉今日子、カヒミ・カリィ
野宮 真貴(ピチカート・ファイヴ)岡崎京子(漫画家)など
いわゆる『女』というジャンルで成功している著名人。

しかしこの作品・・・
『カワイイ!』だけじゃ済まされない
一筋縄ではいかない映画です!


自由への暴走!カワイイは正義か?チェコ・ヌーヴェルヴァーグの代表作


えー、今回はあらすじを省略して書きたいと思います。
というのも『物語』として必要なものが
あまりに欠落している為(笑)
随所に見られるイメージ映像や
不可思議な言動、行動を
一つの文章に書き出すのは至難の業!

簡単に説明すると

自由奔放な女の子二人が
ありとあらゆるハチャメチャを繰り広げ
最終的にどうなっちゃうの?
という作品です。

hinagiku03.jpg

さてさて映画の感想。

問答無用のカワイイの嵐!
カワイイは正義!
だから女の子は最強!


しかし
これは一体。。。
なんなのだろう?(笑)

キラキラした映像が素敵!
会話がキュート!
髪型やファッションがカワイイ!

といった印象の作品なので
会場には服飾系の学校に通ってそうな女子がチラホラ。
しかし終わってみると寝ている子が(笑)

hinagiku11.jpg

そうなんです。。。この作品。。。
物語が超絶に難解なのです。
75分間、ずーっと意味不明!
カワイイ!だけを期待して観に来た人にはそこそこ辛い(笑)
映画をアートとして楽しめる感覚と
物語をある程度深読みする感覚が必要なのだと思います。
sashie176.jpg


華やかな映画の根底にある『冷戦時代』の重苦しさ


この映画の根底には『戦争』があり
映画が作られた1960年代はまさに冷戦の時代。
当時のチェコはソビエトの圧力を強く受けており
社会主義体制を敷かれていました。

以前紹介した『存在の耐えられない軽さ』では
1968年に起こった『プラハの春』を描いています。
『プラハの春』とは自由を求めるチェコスロバキアと
共産主義ガチガチのソ連が衝突して
結果、ソ連軍により弾圧されたという事件。
といってもこの作品は戦争映画ではなく
その時代を生きた人々の『ラブストーリー』。

そしてこの『ひなぎく』
1966年に国内で一旦公開された後、すぐに上映処分を受けました。
それだけでなく、監督のヒティロヴァは政治的検閲によって
映画制作を禁止されてしまったのです。
『え?なんで?こんなにカワイイ映画なのに?』と思うかもしれませんが
物語を深読みする事で、弾圧するソ連への批判や
その社会で生きているチェコの人々の自由への欲求を感じる事ができます。
そもそも映画の冒頭が爆撃機の映像ですから。


マリエ姉妹(姉妹かどうかは不明)が自由奔放にスクリーンではしゃぎ
お腹がすいたら男をたぶらかして飯をおごらせ
欲のままに手づかみでケーキを食べまくり
お酒をガブ飲みして大騒ぎする姿は
世界への反乱のようでもあり
存在自体が『自由』の象徴のように感じられます。

hinagiku06.jpeg

そしてその『自由』にも限界があり
人間でいる以上、社会に順応する事が必要であるという
『自由という名の苦痛』も描いている事に気付かされます。

hinagiku04.jpg

不思議な響きのあるチェコ語で繰り広げられる
彼女たちの不可思議な会話にもそれは見え隠れします。

「誰も私たちに気がつかないわ」
「私たちはいないのかしら?」


自由そのものが否定されていた時代です。
彼女たちこそ『自由』の象徴なので
街の人々は彼女たちの存在を感じていないという事は
『この街には自由を感じれる人はいない』という事なのかもしれません。

そして突然に詩的な言葉

『匂う。通り過ぎる人生の匂い』

自由の素晴らしさをカラダいっぱいで表現する彼女たちですが
ふとした瞬間に感じた明日という未来への不安。
言葉のチョイスはこの映画の魅力でもあります。

hinagiku01.jpg

関係ありませんが『ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、私たちはダメ人間』ってセリフで
筋肉少女帯の『踊るダメ人間』を思い出しました(笑)

そして映画を締めくくる言葉

踏みにじられたサラダだけを
可愛そうと思わない人にこの映画を捧げる


この言葉には一体どのような思いが込められているのか?
オシャレ映画の定番となっている本作ですが
決して『カワイイ!』だけじゃない深さがあります。
機会があったら是非ご鑑賞を。








[ 2014/08/03 15:35 ] カルト | TB(0) | CM(0)

『小さな悪の華』 ホラー映画よりも恐ろしい!トラウマ映画の決定版!悪魔に憑りつかれた少女の美しくも凶暴な生き様を見よ!

eiga045.jpg
『小さな悪の華』
Mais ne nous de'livrez pas du mal

監督 ジョエル・セリア
脚本 ジョエル・セリア

1971年
フランス
103分

フランス映画なのに
なんと本国フランスで上映禁止!
イタリアやイギリスには輸出禁止!
上映されたのはアメリカと日本だけ!
その後ソフト化される事もなく
『まぼろしの映画』的な扱いを受けていた『小さな悪の華』
2008年にDVD化されたおかげで観る事ができました。

上映禁止の原因は多々あるのですが

・反宗教的な内容である事

・窃盗、動物虐待、悪魔崇拝、放火、殺人など
 徹底したモラル無視の内容である事

・少女の露出が多く淫靡な内容である事


ギリギリどころか完全にアウト。
タブーを詰め合わせたような恐ろしい作品です。

二人の少女が憧れたのは『純粋な悪』


あらすじ

黒髪のアンヌは裕福な家で育った暗い目をした少女。
ブロンドのロールは一般庶民の家で育った普通の少女です。
二人は家柄なんて関係なく、いつだって二人でいる大親友。

一見どこにでもいるような少女ですが
二人だけの秘密がありました。
それは悪への憧れです。
二人はカトリック系の学校に通っているにも関わらず
サタンへの忠誠を誓い、様々な悪事を働いていました。
屋根裏部屋から持ち出したボードレールを『悪の華』を読みふけり
完全に悪の魅力にとりつかれていきます。
二人は悪魔崇拝の儀式をきっかけに
悪事はどんどんエスカレートしていく。。。

sashie079.jpg


ホラー映画よりも恐ろしい!トラウマ・カルト映画


この二人の少女の恐ろしさは『純粋』である事。
男の子がヒーローに憧れるように
女の子がヒロインに憧れるように
この二人は『悪』に憧れを抱き
『悪いことってなんて清々しいのかしら!』とでも言わんばかりに
真っ直ぐな気持ちで悪事を重ねていきます。

修道女がキスをしている所をクスクス笑い
面白半分で神父にチクるあたりはまだ可愛いのですが
(それだって酷いけど)

『男の目の前で股を開きパンツを下げて見せつける』という
ド直球な誘惑をしておきながら
襲われた瞬間全力で抵抗!
ブラ&パンツもずり下げられてますが
絶体絶命の状況でギリギリ逃亡に成功!
体を張った捨て身の嫌がらせです。

また、庭番が飼っている小鳥に毒を飲ませて殺すシーン。
『殺す』という行為も残酷ですが、
殺した後、そこを逃げ出さず部屋に隠れてるんです。
小鳥が死んでいる事を知った庭番は悲しみ、亡骸を指で撫でます。
それを見て声を殺して笑ってる!鬼!外道!

完全なクソガキなのですが、少女の純粋な目!
『何も間違った事はしてない』といった顔で
ケタケタと笑いながら自転車を漕ぐ二人は
どこにでもいる女の子そのもの。
この恐ろしい程にピュアな悪。。。
背筋が凍ります。


ニュージーランドで起こった殺人事件がモチーフに


今作は実際の殺人事件がモチーフになっています。
事件を簡単に説明します。

1954年 ニュージーランド
ポーリーン・パーカー(15歳)とジュリエット・ヒューム(16歳)
二人の少女は小説家を目指す親友でしたが
空想と現実の区別がつかないほど
創作ファンタジーの世界に没頭するようになり
やがて性的な関係を持つようになりました。
この事を知った二人の両親は、二人を引き離すため
ジュリエットを南アフリカへ移住させようとしたのですが
これを『ポーリーンの母の仕業』と思い込んだ二人は
殺害を計画。レンガで撲殺しました。
事故死に偽装したのですが、あまりにも雑な計画だった為
警察の追及にあっさりと自供し逮捕されました。
逮捕後の二人は殺人を犯した自覚がまるでなく
空想の延長上での行動だった事が世間を震撼させました。

この事件はピーター・ジャクソン監督も
『乙女の祈り』として映画化しています。

タブーを恐れない圧倒的存在感 忘れられなくなる映画


これだけ反モラル的なカルト映画であるにも関わらず
そこはかとなく上品な作品に仕上がっているのが不思議。

古びた礼拝堂、ロウソクの灯り
密かに行われた悪魔崇拝の儀式は気品があり
とても神聖な儀式であるかのように感じます。
※悪魔崇拝なのに神聖というのも変な話ですが・・・
オルガンで奏でられるメインテーマも印象的で(名曲!)
ゴシックな世界感を作り出しています。

少女が襲われるシーンにも不思議とエグさがありません。
エロティックな描写がたくさんあるにも関わらず
性的な興奮を煽るものにはなっていません。
『男を興奮させておきながら拒絶する』という
儀式的なものなので少女にまったく同情できず
『ほら言わんこっちゃない』という印象になります。
まあ男の方がよっぽど被害者なわけですが(笑)
sashie080.png
大人になりかけている少女の裸体のタブー感は凄まじく
見てはいけないものを見ている罪悪感が。

自転車で田園を走るシーンはいかにも子供らしく
夏休みを楽しむ二人は、そこらへんの子供と同じく
キラキラと輝いています。
sashie081.jpg
それが更なる恐怖を煽るギャップ効果になるのですが。。。

これらの要素のバランス感覚は奇跡的で
ホラー映画級に怖いトラウマ映画であるにも関わらず
二人の少女に翻弄されながら物語は進んでいきます。
あとフランス語ってのがデカイです。
フランス語ってずるいですよね!
ゴニョゴニョ喋る女の子の可愛らしさったらないです。

絶対に子供には見せたくない映画。
しかし封印するにはあまりに惜しい傑作です。
伝説となっているラストシーンは強烈。

個人的には大満足の映画でした。








[ 2013/09/03 15:16 ] カルト | TB(0) | CM(0)

『イレイザーヘッド』 カルト映画の巨匠はデビュー作からぶっ飛んでます!

eiga036.jpg
『イレイザーヘッド』
Eraserhead

監督 デヴィッド・リンチ
1977年
アメリカ
89分


製作・監督・脚本・編集・美術・特殊効果
すべてデヴィッド・リンチ!
彼の長篇映画デビューがこの『イレイザーヘッド』です。

ちなみにイレイザーヘッドとは
鉛筆に付いている消しゴムの事らしいのですが
主人公ヘンリーの髪型はまさしくイレイザーヘッドといった感じ。
でもそれだけじゃなさそうな意味深なタイトルです。


奇才・デヴィッド・リンチの原点


デヴィッド・リンチといえば
登場人物の感情や、物語の時間軸が不明瞭で
さらに現実の明確な線引きをしない事で
見る者を不安にさせて、深読みさせて
独特の世界観を描くという作品が多いのですが

この長編デビュー作『イレイザーヘッド』は、
その後のリンチ作品の原点とも言える
不安、恐怖をあおる耳障りなサウンドと
馬鹿馬鹿しくもショッキングな展開、
意味不明だが淫美でグロテスクな物語という
リンチの個性を強引に詰め合わせたような
怪物のような作品です。


これはまさに『悪夢』そのもの


寝ている時に見る夢って
たまに夢だと気がつく事ってありませんか?
もの凄く怖い夢を見ていても、
あまりに突飛な展開や、ありえない登場人物の出現に
『あれ?これは夢でしょ?』って気がつき
そこで微妙に軌道修正されて夢がまた続いていくという。

この映画はまさに『悪夢』そのものです。
物語が暴走して、これ以上進みようがない行き止まりが見えて
これからいったいどうなっちゃうの?と思っていたら
ストーリーは強引に軌道修正され
『一方その頃』といった感じに物語が再開されます。
結果、物語は超難解なものとなり
支離滅裂な結末へと向かっていくのですが
これだけ滅茶苦茶な展開なのに
なぜか最後まで目が離せないのが不思議です。
『夢なら覚めて欲しい』と願う人をあざ笑うような
不気味な魅力があります。


悪趣味なキャラクターが勢ぞろい


奇形に精神異常者
悪趣味な登場人物ばかりの映画ですが
個人的に一番印象に残ったキャラクターは
ラジエーターの女(ローレル・ニア)です。
sashie064.jpg
主人公ヘンリーがラジエーター(暖房器具)を覗き込むと
そこには小さなステージがあり
両頬に大きなコブを持つ女が
サーカスみたいな音楽にあわせて
恥ずかしそうにチョコチョコと横移動するという場面があります。
まったくもって意味不明ですが
最高に不気味でゾクゾクします。

彼女が歌うシーンもあるのですが
現実逃避讃歌とも言える、なんとも薄気味悪い歌です。

 天国ではすべてがうまく行く
 天国には悩みなんかない
 天国では何でも手に入る
 あなたの悦びも私の悦びも
 天国では何もかもいい気持ち


これがまた耳から離れなくなる名曲!
オルガンのみで演奏されて
ボンヤリとした声で歌われるこの曲は
いかにもデヴィッド・リンチ的なサウンドで
この映画のハイライトと言っていい場面だと思います。

後にツインピークスでこれに似たイメージを使っているので
デヴィッド・リンチ作品の入門編とも言える作品です。
いや・・・入門編にしてはカルトすぎるかもしれませんが。。


深読みさせる天才 正しきカルト映画の世界


ソニックユースの音楽や、ピカソのスケッチのように
雑音や落書きにしか思えないものが
恐ろしく美しいものに感じられる瞬間があります。
リンチのぶっきらぼうなストーリーと独特な映像美は
それぞれの捉え方によって違う解釈を生み出し
世界中を熱狂させています。
デヴィッド・リンチは深読みさせる天才。
この映画も驚くほど様々な解釈がありますが
リンチ本人でさえ説明のつかない映画なのかもしれません。

観る者にとっては完全なる駄作であり
今後の人生に全く必要のない作品でしょうが
一度彼の魅力を知ってしまったら最後。
さらなる地下へ地下へと潜って行きたくなります。

というわけで万人に推薦できる作品ではありませんが
カルト映画の金字塔とも言える『イレイザーヘッド』
デヴィッド・リンチ作品をもっと知りたい方は必見です!








[ 2013/08/08 18:12 ] カルト | TB(0) | CM(0)